きこりの森林・林業の教科書


③生活を守る森林って何?

概要 森林の機能 保安林制度 治山 生活を守る樹木 流木対策
保安林の種類
補助金申請
導入の必要性
治山技術
肥料木
根系別
耐潮性
耐風性
耐火性
Top はじめに 災害について 森林の機能 治山 治山事業 治山の研究 人材育成 対象となる治山現場 新しい試み 海外の治山 コラム
治山の研究
 治山事業を行うには、科学的根拠に基づいて実施しなければなりません。最初は、手探り状態でした。このため、山岳水源地帯の気象資料がなかった頃は、森林測候所を設け、データを収集した経緯があります。これは、治水事業の基礎知識として重要であり、森林が雨量・気温・土壌水分が気象に及ぼす影響を知り、下流の水位の変動をいち早く知ることが出来るため、洪水対策につながりました。
 近代治山の研究においては、1869年に新政権が始動し、4年後の1873年に治山ダムをはじめとする技術をヨーロッパから導入しました。最初は、船運が国を支えていたオランダから技術者を招きました。その後、1904年に山岳地域のオーストリアから技術者Amerigo Hofmann(オーストリアの技術者、帰国後ウィーン農科大学の教授、イタリア森林省林野局長)を招聘し、様々な工法を日本中で試行しながら、日本式に改良を重ね、今に行っています。
1.初期の研究
 治山の研究に当たり、最初は、気象データ不足がありました。このため、山地に気象観測所を設け、基礎的なデータを収集しました。治山事業は、何処も同じ通りに対応できる性格ではなく、地域的な傾向が見られるため、気象データの収集と解析は必須です。加えて、山地崩壊のメカニズムと、土砂を抑止するための森林、すなわち保安林の管理手法の研究です。1945年の第二次世界大戦後は、荒廃地を緑化するための山地災害の復旧技術の開発、木材生産目的の人工林経営を行うための予防治山技術の開発、山地災害危険地区評価手法の開発等でした。

次に、1970年代は、これまで培われた復旧治山技術を見直し、合理化するための研究、崩壊危険地域の判定方法や林地の崩壊危険箇所の推定方法など、予防治山技術の確定に向けた研究と、林況の変化と流出、流域保水容量の推定法などの水源慣用技術の確立に向けた研究を行いました。

 1980年代は、ライシメーターによる水収支、渓流工作物の流域調整機能、林種転換に伴う長期的流出変化の研究を通じて水土保全技術の高度化、劣悪基盤における緑化工法、地滑り地の実態把握と類型化、地滑り地の排水工法、雪崩防止林の育成方法、海岸防風林の最適な幅、治山事業における航空写真の実用的活用方法等の研究を通じて国土保全技術の高度化、耕作地などに対する防風保安林の造成方法など、生活環境保全的利用技術の確立、山地崩壊及び洪水発生危険地区判定法の確立、環境の変化に対応した海岸林の環境保全機能の維持強化に関する技術の確立、都市や都市周辺部における樹林地の維持と管理に関する研究を行いました。

 1990年代は、水保全のための流域区分法の開発や、山地流域における水循環の解明など、森林の水保全機能の解明と維持に関する研究、崩壊の発生機構の解明と防止技術の開発や侵蝕による斜面荒廃の機能と危険度の予測、復旧工法の技術開発保育技術の開発、地すべり危険度の評価と地すべり防止機能の向上等といった土砂災害発生機構の解明と治山技術の開発、森林微気候の形成機構や山地森林の気候特性、立地条件の違いによる斜面安定強度の定量化、山地災害の発生危険度予測と避難基準雨量、防災林の機能解明と造成m雪崩の発生条件と森林の雪崩防止機能の解明などの研究を通じた森林の防災機能の解明と森林災害防止技術の向上を行いました。

2.今行われている研究
 森林総合研究所では、①環境変動、施業等が水循環に与える影響に関する研究、②森林生態系における水動態の解明、③山地災害危険度の評価技術の開発、④治山施設等による被害軽減に関わる技術開発、⑤地すべりの長期変動機構に関する研究に取り組んでいます。

3.未来にむけた研究
 行政機関や社会からの要望に応える形で、①山地災害防止ステムの確立、②気候変動に対応した山地防災力の向上を2050年に達成する目標を立てています。このため、山地災害データベースの構築と、山地災害危険度の変化予測手法の性能の強化を行い、山地災害防止のための森林管理技術の開発を行っています。
また、広域、流域、斜面単位での観測・監視技術の向上も不可欠であり、リアルタイム観測・監視技術の向上、センシング技術の開発、遠隔操作技術や、地上設置観測技術の活用の高度化も行っています。さらに、ハザードマップ作成技術や治山施設の機能向上も行っています。

【参考】
1971年の研究内容は、
研究目標 研究課題 研究項目
国土保全 復旧治山技術の合理化 荒廃地の復旧工法 ・治山ダムに作用する代力
・実播工による緑化形態
・散布緑化工における木本植物導入法
・山地荒廃復旧
・多雪地帯の経済的治山工法
施工跡地の管理方法 ・温帯少雪地帯の施工跡地の取り扱い方法
予防治山技術の確立 森林の保安機能 ・崩壊危険地域の判定方法
・隣地の崩壊危険箇所の推定方法
・森林被覆形態と土砂流出量
・樹根によるによる土壌剪断力補強効果
・治山計画における危険度判定技術
・山地荒廃予防
・荒廃危険地域判定
・山地開発による林地保全
・土砂生産の予防計画
・山地開発による林地保全
・流域保水容量の推定法
・流域変数による洪水危険流域判定法
・水源涵養林機能
・林地における雨水貯留
・海岸防災林の空中塩分補足機能
・山地防風樹林の配置法
・海岸防風林の幅の最適度
・防風林の機能
・林地雪崩害防止の林木散生状保残法
・若齢林による雪崩防止林造成法
・若齢林分の埋雪機構
・雪崩防止林の機能
予防治山工法 ・治山ダムのかさ上げ法
・透水性横工と流況
・山腹理水工種と地表流出
・大面伐採地における簡易出水調節法
水源涵養技術の確立 森林の利水機能 ・林況の変化と流出
・模型傾斜地の水収支モデル
・流域保水容量の推定法
・高海抜流域の森林伐採と流出
・水源涵養林の機能
・山地流域の流出特性
利水工法 ・溝渠法の理水効果
・山腹理水工種と地表流出
1980年の研究内容
水土保全技術の高度化 ・地下水資源の評価に関する調査研究
・渓流工作物の流量調整機能
・林況変化と流出
・ライシメーターによる水収支
・高海抜流域の森林伐採
・林床植物の水分収支
・浸透装置による地被別水収支
・多雪地帯における林況と流出
・温暖多雨地帯の山地流出機構
・林種転換に伴う長期的流出変化
国土保全技術の高度化 ・崩壊の機構と森林
・治山工作物の通水部の設計
・播種緑化工跡地における林叢形成促進方法
・劣悪基盤における緑化工法
・地滑り地の実態把握と類型化
・地滑り地における治山ダムの適用法
・地滑り地の排水工法
・雪崩防止林の育成方法
・雪崩防止策の機能
・海岸防風林の幅の最適度
・残存林分の雪崩防止機能
・伐根利用による雪崩防止林造成法
・山地荒廃地域における保全対策
・スギ・ブナ林地帯の雪崩防止林造成
・特殊荒廃地域の崩壊発生機構
・地震時における第三紀層地滑り危険地の判定法
・治山施設の総合的効果の評価手法
・治山事業における空中写真の実用的活用方法
生活環境保全的利用技術の確立 ・耕地等に対する防風保安林の造成法
山地崩壊及び洪水発生危険地区判定法の確立 ・崩壊危険地区判定法
・洪水危険地区の判定法
農業水利施設系における水管理のシステム化 ・水資源の有効利用のための水文解析と水収支
環境変化に対応した海岸林の環境保全機能の維持強化技術の確立 ・各種環境下における海岸林の事態解析
・海岸林の環境保全機能に影響を及ぼす各種要因の実態解析
・各種環境下における海岸林の実態解析
・海岸林の環境保全機能に影響を及ぼす各種要因の実態解析
・海岸林の環境保全能力の評価
・海岸林の環境保全機能の維持強化法の確立
都市及び都市周辺における樹林地の維持と管理に関する研究 ・樹林地に及ぼす環境条件の影響

1989年の研究内容
森林の水保全機能の解明と維持・造林技術の向上 ・山地流域における水循環の解明
 山腹斜面における水循環過程の解明
 多雪水源流域における林況と流出
 高海抜森林流域における流出特性
 山地流域における水循環過程のモデル化
・山地流域のおける水保全技術の開発
 水保全のための流域区分法の開発
 水保全機能向上技術の開発
土砂災害発生機構の解明と治山技術の開発 ・崩壊、浸食、土石流の発生予測法と治山工法の確立
 崩壊の発生機構と防止技術
 浸食による斜面荒廃の機能と危険度の予測
 植物の斜面安定化機構の解明
 復旧工法の技術開発と保育技術の開発
・地滑り危険度の評価と地滑り防止技術の向上
 地滑り安定解析法の確立
 地滑り災害危険地の評価と対策
 火山帯における崩壊・地滑りの発生危険度
森林の防災機能の解明と森林災害防止技術の向上 ・森林が気候形成に及ぼす影響の解明
 森林微気候の形成機構
 山地森林の気候特性
・森林の山地災害防止機能の評価
 森林の防災機能の事態把握と類型化
 立地条件の違いによる斜面安定強度の定量化
 山地災害の発生危険度予測と避難基準雨量
・防災林の機能解明と造成・維持及び管理技術の高度化
 海岸防災林等の機能解明と類型化
 海岸防災林等の管理技術の高度化
・積雪環境の把握と林地の管理技術の高度化
・雪崩の発生条件と森林の雪崩防止機能の解明
・雪崩防止工法の開発と改善
 
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