きこりの森林・林業の教科書


③生活を守る森林って何?

概要 森林の機能 保安林制度 治山 生活を守る樹木 流木対策
保安林の種類
補助金申請
導入の必要性
治山技術
肥料木
根系別
耐潮性
耐風性
耐火性

森林と裸地の流出土壌の違い

森林内は樹根によって土壌が保持されるとともに、落葉落枝、潅木、草等が地表を覆うことで、降雨による土壌の浸食や流出が抑えられている。森林と裸地を比較した場合、森林は裸地の150分の1といわれています。
森林
2t/年・ha
耕作地
15t/年・ha
裸地(荒廃地)
307t/年・ha
丸山岩三「森林水文」実践林業大学1970年
植生による浸透能の違い

森林の土壌は落葉落枝による有機物の供給や土壌生物の働きにより、穴の多いスポンジ状のようになっており、雨水や雪解け水を速やかに地中に浸透させる働きがあります。
その浸透能力は、裸地の3バイト言われており、森林は雨水などを貯えてゆっくりと河川に流し、洪水や渇水を緩和する機能があります。

また、その過程で濁りを抑えたり、窒素等水の流れに繋がる物質を取り除くなど、水質を浄化しています。

森林
258mm/hr
草地
128mm/hr
裸地(荒廃地)
79mm/hr
村井宏・岩崎勇作「林地の水及び土壌保全機能に関する研究」1975

森林には、様々な機能があります。二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するだけで無く、薪炭や木材生産をする一方、水源を豊かにし、土砂災害を防ぎ、人の心を癒やすなど、人が生活する環境を守る機能を持っています。


機能 内容
生物多様性を守る機能 森林は、その土地の環境に応じて、複雑かつ多様な生態系を形成しています。このため、遺伝子や生物種、生態系など生物多様性の維持に貢献しています。
地球環境を守る機能 森林は、光合成活動により、酸素を供給するとともに、人間の活動によって排出される二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を抑えています。
土壌保全・土砂災害を予防する機能 森林は、地中に発達した根系によって、土壌を斜面につなぎ止める能力を持っています。また、土壌の表面を覆う落葉落枝や灌木、下草等によって、降雨などによる土壌の流出を抑え、土砂崩れなどの土砂災害の未然防止に役立っています。
水源を涵養する機能 森林の土壌は、有機物や様々な生物によってスポンジのような構造となっているため、裸地と比べて、雨水を地中に浸透させる能力が約3倍以上あります。このため、雨水を充分土壌中に貯え、ゆっくりと河川に流すことができるため、洪水や渇水を緩和するほか、水質を浄化しています。
快適環境を形成する機能 森林は、蒸発散作用によって、夏の気温を低下させ、都市部におけるヒートアイランド現象を抑える働きがあります。また、樹冠による塵埃の吸収や汚染物質の吸収機能、樹林帯による防音効果なども備えており、快適な生活を支えています。
保健やレクリエーションを楽しむ機能 精神的あるいは肉体的ストレスを有する人にとって、森林が安らぎや癒しの効果を持つ空間であること、樹木が発散する揮発性物質がNK細胞を活性化させることで、免疫力が高まることが実証データから検証されています。林内にいることで、気分転換や健康維持に高い効果を発揮することが期待できます。
文化や教育のための機能 森林の景観は、行楽や芸術の対象として人々に感動を与えるほか、伝統文化伝承の基盤として民族の自然観の形成に大きく関わっています。 また、森林環境教育や体験学習の場としての役割を果たしています。
物質を生産する機能 森林は、木材、きのこ、山菜、竹など様々な資源を供給しています。これらの資源は、適切に森を管理することにより、半永久的に繰り返し生産ができる“循環型資源”として私たちの生活を支えています。また、石油などの化石燃料に代わる燃料として、環境負荷が少ない木材の活用も期待されています。

 

水の浄化について
私たちの活動の中で、大量の窒素酸化物を大気中に、排出しています。これらは、光化学スモッグなど、大気汚染を招いています。この汚染物質は、大気中の雨などに取り込まれ、酸性雨として地上に降り注ぎます。しかし、森林があることで、窒素やリン、アンモニアなどの汚染物質は、イオン交換を通じて分解され、一部はミネラルとなって根から取り込まれ、樹木の生長に使われます。
また、細菌をはじめとする微生物や昆虫、動物等の活動が、森林内で有機物を分解し、無機質にしていきます。これが、豊かな土壌を作ります。このような工程を通じて、酸性だった水が中和され、腐敗する有機物が無機物になることで、きれいな水が誕生します。
水の貯蔵
 森林に降った雨や雪は、地面、植物、生き物、空間に水を蓄えます。地面には、落ち葉のすきまや、蟻やモグラなどが作った穴、ミミズの糞等、様々な空間がスポンジの役目となり、水を蓄えます。また、植物が根から水を吸収することで、植物体の中に、大量の水をとどめます。さらに、蒸散作用によって、森林内に、水分を放出させ、空間にとどめることになります。このようにして、空間を含め森林は、水を貯蔵します。
 この為、一度に降った雨を直接、森林の外に流出さず、留めておくことで、地中に浸透することになります。地中水として、一部は、ゆっくり岩に浸透することで、地下水になります。
 このため、雨水を浸透させる能力は、裸地(山崩れ跡地)の3倍、草地の2倍といわれており、大量の降雨に対し、森林の存在が洪水を緩和しています。
山地災害と森林
 山地災害のデータは、1981年以降、雨量の増加が見られる一方、災害件数は、減少傾向がみられます。このため、禿げ山の減少=森林の回復、増加に一定の効果があるといえます。

その他の機能
 森林の機能には、木材生産や森林療法があります。木材生産には、天然林経営と、人工林経営があります。また、森林療法は、人の血液中の免疫細胞であるNK細胞(Natural Killer cell)の活性が高まることがわかっており、病気に対する予防効果がわかっています。このため、予防医学として、注目されています。





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