きこりの森林・林業の教科書


③生活を守る森林って何?

概要 森林の機能 保安林制度 治山 生活を守る樹木 流木対策
保安林の種類
補助金申請
導入の必要性
治山技術
肥料木
根系別
耐潮性
耐風性
耐火性
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森林の機能
 森林には、様々な機能があります。二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するだけで無く、薪炭や木材生産をする一方、水源を豊かにし、土砂災害を防ぎ、人の心を癒やすなど、人が生活する環境を守る機能を持っています。
機能 内容
生物多様性を守る機能 森林は、その土地の環境に応じて、複雑かつ多様な生態系を形成しています。このため、遺伝子や生物種、生態系など生物多様性の維持に貢献しています。
地球環境を守る機能 森林は、光合成活動により、酸素を供給するとともに、人間の活動によって排出される二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を抑えています。
土壌保全・土砂災害を予防する機能 森林は、地中に発達した根系によって、土壌を斜面につなぎ止める能力を持っています。また、土壌の表面を覆う落葉落枝や灌木、下草等によって、降雨などによる土壌の流出を抑え、土砂崩れなどの土砂災害の未然防止に役立っています。
水源を涵養する機能 森林の土壌は、有機物や様々な生物によってスポンジのような構造となっているため、裸地と比べて、雨水を地中に浸透させる能力が約3倍以上あります。このため、雨水を充分土壌中に貯え、ゆっくりと河川に流すことができるため、洪水や渇水を緩和するほか、水質を浄化しています。
快適環境を形成する機能 森林は、蒸発散作用によって、夏の気温を低下させ、都市部におけるヒートアイランド現象を抑える働きがあります。また、樹冠による塵埃の吸収や汚染物質の吸収機能、樹林帯による防音効果なども備えており、快適な生活を支えています。
保健やレクリエーションを楽しむ機能 精神的あるいは肉体的ストレスを有する人にとって、森林が安らぎや癒しの効果を持つ空間であること、樹木が発散する揮発性物質がNK細胞を活性化させることで、免疫力が高まることが実証データから検証されています。林内にいることで、気分転換や健康維持に高い効果を発揮することが期待できます。
文化や教育のための機能 森林の景観は、行楽や芸術の対象として人々に感動を与えるほか、伝統文化伝承の基盤として民族の自然観の形成に大きく関わっています。 また、森林環境教育や体験学習の場としての役割を果たしています。
物質を生産する機能 森林は、木材、きのこ、山菜、竹など様々な資源を供給しています。これらの資源は、適切に森を管理することにより、半永久的に繰り返し生産ができる“循環型資源”として私たちの生活を支えています。また、石油などの化石燃料に代わる燃料として、環境負荷が少ない木材の活用も期待されています。

また、日本では、これまでの災害との関わりの中で気がついたことを、整理しています。そして、行政として、保安林制度という、生活を安心して暮らせるための森林を分類しています。

保安林の種類
保安林の種類 内容
水源涵養保安林
流域保全上重要な地域にある森林の河川への流量調節機能を安定化し、その他の森林の機能とともに、洪水、渇水を防止する他、農業用水や生活用水などを確保したりします。
土砂流出防備保安林
下流に重要な保全対象がある地域で土砂流出の著しい地域や崩壊、流出のおそれがある区域において、林木及び地表植生その他の地被物の直接間接の作用によって、林地の表面侵蝕及び崩壊による土砂の流出を防止します。
土砂崩壊防備保安林
崩落土砂による被害を受けやすい道路、鉄道その他の公共施設等の上方において、主として林木の根系の緊縛その他の物理的作用によって林地の崩壊の発生を防止します。
飛砂防備保安林
海岸の砂地を森林で被覆することにより飛砂の発生を防止し、飛砂が海岸から内陸に進入するのを遮断防止することにより、内陸部における土地の高度利用、住民の生活環境の保護をはかります。
防風保安林
林冠をもって障壁を形成して風に抵抗してそのエネルギーを減殺し、これを防止撹乱することにより風速を緩和して風害を防止します。
水害防備保安林
河川の洪水時における氾濫にあたって、主として樹幹による水制作用及びろ過作用並びに樹根による侵蝕防止作用によって水害の防止軽減をはかります。
潮害防備保安林
津波又は高潮に際して、主として林木の樹幹によって波のエネルギーを減殺するほか、空気中の海水塩分を捕捉して被害を防止します。
干害防備保安林
洪水、渇水を防止し、又は各種用水を確保する森林の水源涵養機能により、局所的な用水源を保護します。
防雪保安林
飛砂防備や防風保安林と同様の機能によって吹雪(気象用語では「飛雪」といいます。)を防止します。
防霧保安林
森林によって空気の乱流を発生させて霧の移動を阻止したり、霧粒を捕捉したりすることで霧の害を防止します。
なだれ防止保安林
森林によって雪庇の発生や雪が滑り出すのを防いだり、雪の滑りの勢いを弱めたり、方向を変えたりする等により雪崩を防止します。
落石防止保安林
林木の根系によって岩石を緊結固定して崩壊、転落を防止したり、転落する石塊を山腹で阻止したりすることで、落石による危険を防止します。
防火保安林
耐火樹又は防火樹からなる防火樹帯により火炎に対して障壁を作り、火災の延焼を防止します。
魚つき保安林
水面に対する森林の陰影の投影、魚類等に対する養分の供給、水質汚濁の防止等の作用により魚類の棲息と繁殖を助けます。
航行目標保安林
海岸又は湖岸の付近にある森林で地理的目標に好適なものを、主として付近を航行する漁船等の目標となって航行の安全をはかります。
保健保安林
森林の持つレクリエーション等の保健、休養の場としての機能や、局所的な気象条件の緩和機能、じん埃、煤煙等のろ過機能を発揮することにより、公衆の保健、衛生に貢献します。
風致保安林
名所や旧跡等の趣のある景色が森林によって価値づけられている場合に、これを保存します。

この中で、魚付き林というユニークな森林があります。森林があることで、ミネラル分が海や湖に供給され、プランクトンが増え、小魚が集まり、さらに、捕食する中・大型の魚が集まってきます。一旦、森林に貯蔵された水が流れ込むため、水温が一定となり、貝類をはじめ、海や湖の生き物にも良い環境を生み出しています。かつて破壊した森林が回復したため、漁獲量が回復した、増加した話は、日本各地にあります。このため、漁師が積極的に森作りをしているところもあります。

1.水の浄化について
 私たちの活動の中で、大量の窒素酸化物を大気中に、排出しています。これらは、光化学スモッグなど、大気汚染を招いています。この汚染物質は、大気中の雨などに取り込まれ、酸性雨として地上に降り注ぎます。しかし、森林があることで、窒素やリン、アンモニアなどの汚染物質は、イオン交換を通じて分解され、一部はミネラルとなって根から取り込まれ、樹木の生長に使われます。
また、細菌をはじめとする微生物や昆虫、動物等の活動が、森林内で有機物を分解し、無機質にしていきます。これが、豊かな土壌を作ります。このような工程を通じて、酸性だった水が中和され、腐敗する有機物が無機物になることで、きれいな水が誕生します。

2.水の貯蔵
 森林に降った雨や雪は、地面、植物、生き物、空間に水を蓄えます。地面には、落ち葉のすきまや、蟻やモグラなどが作った穴、ミミズの糞等、様々な空間がスポンジの役目となり、水を蓄えます。また、植物が根から水を吸収することで、植物体の中に、大量の水をとどめます。さらに、蒸散作用によって、森林内に、水分を放出させ、空間にとどめることになります。このようにして、空間を含め森林は、水を貯蔵します。
 この為、一度に降った雨を直接、森林の外に流出さず、留めておくことで、地中に浸透することになります。地中水として、一部は、ゆっくり岩に浸透することで、地下水になります。
 このため、雨水を浸透させる能力は、裸地(山崩れ跡地)の3倍、草地の2倍といわれており、大量の降雨に対し、森林の存在が洪水を緩和しています。

3.山地災害と森林
 山地災害のデータは、1981年以降、雨量の増加が見られる一方、災害件数は、減少傾向がみられます。このため、禿げ山の減少=森林の回復、増加に一定の効果があるといえます。


アメダスで見た短時間強雨発生回数の長期変化について

一方で、これまでは殆ど無かった流木による被害が増えています。

4.その他の機能
 森林の機能には、木材生産や森林療法があります。木材生産には、天然林経営と、人工林経営があります。また、森林療法は、人の血液中の免疫細胞であるNK細胞(Natural Killer cell)の活性が高まることがわかっており、病気に対する予防効果がわかっています。このため、予防医学として、注目されています。
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