きこりの森林・林業の教科書
⑧林業経営を始めよう

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育苗作業

苗木栽培計画の立案
苗木生産は、植林地における植栽時期に合わせて、逆算して行う。
このため、事前に苗畑施設、苗床枠、寒冷紗の設置及び灌漑システムの設置、検定種子、培養土等の必要資材の準備が必要となる。

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土壌の準備と苗床の消毒
苗床用の土壌の準備について、以下に留意する必要がある。
・種子の吸水、根系の発達に望ましい物理条件を有すること。
・適切な播種密度及び播種深度を確保すること。
・病害対策を行うこと。

苗床の土壌の準備については、土、砂及び有機物(十分に分解された牛糞、ミミズコンポスト、腐葉土)を同じ割合で混合し、播種前に地均しする。
苗床の消毒は、病害虫による被害の軽減だけでなく、雑草防除にも効果的である。土壌の消毒は毎年増殖する真菌、バクテリア及び線虫の防除となる。
最近は、安価で、安全かつ環境への悪影響を最小限にとどめた土壌消毒方法が必要となっている。

病害防除のための土壌消毒として、日光消毒も有効である。これは、土壌表面を透明ビニールシートで被覆し、太陽光エネルギーを利用して6週間以上加温する。

播種後の予防的処置として、苗床内の温度又は湿度が上昇し「立ち枯れ病」が発生しやすい環境条件にある場合は、灌漑頻度を軽減しながら殺菌剤の散布を並行して行う方法が望ましい。

蒔き付け床
 床の側面を木枠で囲う枠平床と、客土を盛り上げて作る平床がある。

枠平床 平床




蒔き付け床は、幅1m、長さは、作業効率から10m以内で作成する。
枠平床は、高さ15cm、平床では5cm程、盛り上げる。
床と床の間は、50cmの歩道を作成する。
砂質地では、強雨の場合、土壌が流亡する恐れがあるため、平床は不向き。
このため、平床は粘土質土壌に適している。

蒔き付け床の客土は、良好な這いうる意を保持するため、下層の5cmの厚さに小石を敷き、中層には目の大きさが8mmの篩を用い、表層には目の大きさが2mmの篩を用いて、砂質土を重ねる。
篩が無い場合は、熊手で土を砕き、その後、殺菌剤、除草剤を噴霧する。

砂質土壌地帯で蒔き付け床を作設する場合は、山土で客土し、殺菌剤、除草剤を噴霧する。

床替床



種子
植林を成功させるためには種子の選定が重要である。優良種子は生存力及び樹木の品質を向上させ、生育期間を短縮する。
詳細は、「種子の確保」を参照

播種と苗床の管理
苗床への播種の場合、種子の種類によっては、播種前に刺激を与え、発芽を助長する処理が必要なものもある。
種子は真菌の攻撃を防ぐために播種前に消毒しなければならない。種子の粒径は大型、中型及び極小種子を含む小型があるため、播種する苗床枠は種子の大きさによって決まる。小型種子の場合は、適当に散布すればよいが、大型及び中型種子では、種子間及び列間隔を小さくして列状播種する

苗床での苗木の手入れとして、灌漑(基本、毎日行い、苗木が安定し、根張りしたら、頻度を減らす)、雑草防除(最初は手作業で除草する。苗木が安定し根張りした後は、小型の鍬や草刈り鎌で列ごと除草する)及び選定(成長の悪いもの、徒長する苗木を除去する。)となる。

-望ましい処理-
・苗床には、良質の培養土を投入する。
・播種前に苗床に噴霧器で灌水する。
・種子は均等な間隔で浅めに播種する。小型種子は適当に散布し、中型以上の種子は列状播種する。
・種子と土壌が密着するように軽く鎮圧する。
・発芽を待つ期間は、冷気や降雨から保護するためにビニールシートで覆う。
・強い日射しや風雨から保護するための日よけを設置する。
・大量に発芽する場合は、分散するか成長に応じて苗木を速やかに移植する。
・病害の発生を避けるため、殺菌剤を定期的に散布する。苗床が高温多湿状態になる際に行う。


植え替え
樹種にも寄るが、ポット苗の場合、苗木が、5~8cmもしくは、葉が3,4枚出た時点で植え替える。
苗木は損傷しやすいので、植え替えの前日に苗床に十分な灌水を行い、土壌を柔らかくする。

・苗木は夜間に回復するため、植え替えは午後が望ましい。
・最初に土を掘り起こして、苗木は葉からゆっくり取り出す。
・根がポットより長い場合は、剪定鋏で切り落とす。
・ポットに根が入れられるように事前に木の棒で適度な深さの穴を用意し、根が折れないように植え付ける。植え付けた後、ポットを下と横から押し、根に土を密着させる。

-やってはいけないこと-
・根の長い株を、植え替えること。(必ず剪定鋏で切ること)
・苗木を乾燥土に植え替え、その直後に灌水すること。(前日に水分を含ますこと)
・植え替えを行った後で日よけを設置すること。(日陰で作業すること)
・直射日光を受ける暑い時間帯に植え替えを行うこと。(夕方は望ましい)
・損傷した苗木や欠陥のある苗木をそのまま植え替えること。(傷物は捨てること。再利用はしない)
・乾燥した土が付着した苗木を茎から引抜き、根や茎を傷つけること。(水分をたっぷり与えておくこと)
・過度の水圧、水量を与えること。(根が土から離れて浮く)
・苗木を長時間手元に置く、外に放置するなど。(根が乾燥する)
・指で穴を空けること。(十分な深さが保てない)
・穴に挿入した時に根が傾いた状態になっていること。
・根の周囲に隙間を残すこと。(根が乾燥し枯死する)


造林地に向けて求められる苗木
苗木の望ましい品質は

・苗の高さと根の長さにバランスがとれていること。
・苗がまっすぐなこと。
・根曲がりがないこと。(生育が遅くなる。最悪枯死))
・茎葉が健全なこと。
・移送に向け適度な大きさであること。

ハードニング
環境耐性強化のため、出荷前に日除けの無い場所に移動し、灌水頻度を減らす。
主根を選定すると、虹根の生育や目下が助長され、活着率が上がる。

適切な高さ、根元径があるかを確認して、選苗を行う。
品質の悪い苗は、除去し処分する。樹種にも寄るが一般的に2~3割は不良苗と言われている。
予定数の3割増しで生産し、出来の悪い苗は、躊躇なく処分する。


輸送条件(ポット苗の場合)
ポット苗を損傷なく輸送するためには、輸送時に箱詰めしなければならない。
箱は密閉する必要はないが、ポットが動かないように緩衝材を入れる必要がある。
なお、大量の苗木輸送の際に積み重ねられるように、箱は全て同じ大きさにすること。
苗木を苗畑から植林地に輸送する場合、数時間を要するため、その間に強い日射、強風等の様々な悪条件が発生し、これによって輸送中の苗木が枯れてしまうことがある。
夜間もしくは朝方に輸送することが望ましい。
苗木を輸送する最善の方法は輸送用トラックだが、屋根なしのトラックの場合は覆いをすること。
苗木の品種は区別しにくいため、苗木のロット毎にラベルを張り付けること。




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