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苗木から植栽:育種の考え
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良い森林は良い苗木から |
木材生産目的に、植林が始まった頃は、形状の良い樹木のある森林から種を集めて植林していました。日本の林業地の多くは、奈良県吉野地方や三重県熊野地方のスギの種を入手して、人工林経営を行っていました。 江戸時代の話です。資源不足から植林を通じて資源を増やすためには、良いものを選んでいたのです。 京都の北山杉や九州のスギは、挿し木で増やす方法も行われていました。近場は挿し木で、遠くは種を持って増やしていったのです。 昭和14年(1939年)に)林業種苗法(旧法)が出来ます。明治・大正時代に吉野杉の種を持ち帰り植えてはみたけれど、有名な林業地から苗を持ち込んだけど、どうもうまくいかない事例が出てくるようになったのです。また、第一次世界大戦の影響による物価高騰もあり、質の悪い苗畑が登場します。不良品種や病気、スギ赤枯れ病の苗が出回るんです。 大正8年(1919年)5月に「樹苗養成奨励規則」を民有林向けに造り、造林を奨励します。貴重な資源だったからです。昭和9年(1934年)7月国有林の優良な種子の払い下げを目的とした「造林用種子払下規則」が制定公布することになります。より森林は良い苗木からということです。母樹林の設定、種子配給区域の指定、種苗販売業者の届出、販売種苗への保証票の添付(質の担保)などの制度化がここで決まったのです。 裏を返せば、どれだけ失敗した事例が全国にあったかということです。植林する側としては、産地系統が明らかな優良種苗の必要性が高まったとも言えます。 こんな当たり前が通じなくなる時期が来ます。それは、第二次世界大戦後です。 資源不足を解消とする戦争であったため、使える資源は使うということで、日本中至る処が禿げ山でした。木で戦闘機を作るくらい資源不足だったからです。このため、戦後に行ったのが、緑化のための植林です。 せっかく植林するなら、スギやヒノキといった経済的にお金のなる木を植えたいという動機の元、日本中で植林が行われます。早く緑にしないと、荒廃した山からの土砂が水害を招きます。 国有林を中心に植林が行われますが、問題は、苗木不足です。需要と供給が一致しなければ、緑化できません。結果、戦前からある苗畑だけでは足りず、苗木を外部から調達することになります。 外部からの調達になると、血に飢えたサメのように、一攫千金を狙って苗畑経営を始めます。雨後の竹の子のように苗畑が誕生します。理由は、買ってくれるから。買ってくれるのが判っているので、昨日まで苗木を扱ったことが無い人たちまで、苗木作りに参入しました。 結果は、質の悪い苗木も沢山生産され、山に植栽されたのです。戦前に作った制度が機能しなくなってしまった結果でもあったんです。 数十年後に収穫しようとしても、曲がった木、成長の悪い木等、利益を生まない木が植えられたのです。 その結果として、、昭和32年(1957年)から国の事業として林木育種事業が開始しました。 |
林木育種は、広大な土地と長期間の時間が必要なため、国家事業として世界中で行われています。 農作物の場合、新品種は数ヶ月から数年で結果が出るが、林木は数十年かかるため、新品種というのを生み出すのは現実的では無く、既存の中から見付けるのが現実的です。 1930年代のスェーデンで、成長や形質の良い優れた樹木を「精英樹(エリートツリー)」として選抜し、採種園・採穂園として確保しました。これを造林事業用の種や苗木生産の基にしたのです。これに次代検定林を作り、次の世代に良い木を作る事が始まります。これが、集団選抜育種法です。 先進国であったスエーデンより、リンキスト博士(Dr. B. Lindquist)が昭和27年(1952年)に来日して、指導するのです。翌年の昭和28年(1953年)に林木育種協会が設立され、議論を交わしながら、昭和31年(1956年)8月23日に「林木育種指針」が林野庁から発表されます。 基本的な考え方は、 ①品種改良は事業として行うべき ②林業の要望に沿った目標とそれを実現する方法を備えた育種計画を持つこと ③育成に長い期間をかけない ④新品種が育成された時には、一定の遺伝的構成をもった種苗を多量に供給できなければならない ⑤立地条件による特性の現れ方の違いを検定すること です。 |
杞憂で終われば良いのですが、気候が変わりつつあるようです。温暖化なのかは判りません。多分、太陽の気まぐれだと思っています。しかし、暑くなる日が早くなり、長くなると、人もそうですが、植物にも影響を与えます。今までとは違うわけですから。 このため、暑さに強い品種の開発、暑い地域からの樹種や品種の導入、病気対策など、いろいろとすることがふえることになるでしょう。詳しいことは専門書に任せて、その導入部分になれれば幸いです。 情報や写真等提供をお願いします。 |