きこりの森林・林業の教科書
⑧林業経営を始めよう

はじめに 樹種の種類 苗木から植栽 植栽から保育 間伐から主伐 伐採・搬出 林道管理 安全対策 レクリエーションの森 メモ
育種の考え
苗木調達の仕組み
林業品種
種子の確保
苗木作り
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苗木から植栽:苗木作り

育種の考え 苗木調達の仕組み 林業品種 種子の確保 苗木作り メモ
苗木生産の方法と苗木の種類 設計と管理 育苗作業 裸根苗 挿し木苗 ポット苗 コンテナ苗 苗木の値段
苗木半作。苗木の出来で木材の収穫の価値の半分が決まるということです。
苗木の生産方法には、種子由来の実生苗と穂木由来の挿し木苗(接ぎ木苗、取り木苗)に区分される。

実生苗の役目には以下の点があります。
・実生苗は、種子生産の段階で交配の影響を受けるので、母樹の遺伝子を100%は受け継がない。
 (遺伝的多様性が確保されやすく、環境適応力が高い)
・実生苗を用いた場合、成長の個体間のバラツキが挿し木苗より大きい。
・実生苗を用いた場合、各種の被害に対する抵抗力に個体差が生じる。
・実生苗を用いる方が、共倒れ型の被害が発生しにくい。

一方の挿し木は、母樹のクローンであるため、母樹の遺伝子を100%は受け継ぐ。
・ 優れた形質を発現しやすいので、目的に合った材を生産しやすい。
・挿し木苗を用いた場合、実生苗より、成長や抵抗性に個体差が小さい。
 (そっくりなので、環境適応力が弱い)
・挿し木苗を用いる方が、共倒れ型の被害が発生しやすい。

苗木の形状(裸苗・コンテナ苗・ポット苗・チューブ苗)があります。

苗木の種類 方法 特徴
裸根苗
裸苗
普通苗
苗畑(露地)で育てられた苗 価格が安い。
根が裸出しているので、取り扱いに神経を使う。
(根が乾燥すると活着率が低下する)
植栽時期(春と秋)が限定される。(人の手配が課題)
根を広げて植栽するため、効率が悪い。
根鉢がないので、造林地で大量の苗を持ち運ぶのに適している。
コンテナ苗
プラグ苗
穴が開いたトレイまたは筒状の容器で育てられた苗 空中根切りにより、根のルーティングがない。
空中根切り:根は空気に触れるとそこで成長が止まる。この性質を利用して、容器の底を根が外に伸びやすい形状にし、根を容器の外に出させて、そこで根の伸長を止めるという栽培法。
培地付きの苗木であるため、取り扱いが容易。
裸苗と比べ、植栽時期が広く取れる。通年植林が可能。(労働力の分散が可能)
裸苗に比べると、造林地で持ち運びにくい。
チューブ苗 ナイロンまたは不織布のチューブで育てられた苗 チューブのまま持ち運ぶので、コンテナ苗よりも取り扱いや持ち運びが容易。
トウモロコシ由来等の生分解性チューブの場合、そのまま植栽できる。
ポット苗 主にビニール製のポットで作られた苗。 広葉樹の苗木に多い。
日本の場合、針葉樹の造林に用いられることはほとんどない。
ポット内で根がルーティングを起こしているものが多い。
培地付きの苗木であるため、活着率が良い。(ただし植栽時に根をほぐすこと)
根鉢の大きさがコンテナ苗、チューブ苗より大きいため、重く、造林地で持ち運びにくい。
一般に価格が高い。
ポットのナイロンの質が悪いと、破れて、ポットが崩れる。
30cmの苗を育成するには、ポット苗の場合、直径6.5cm、深さ15cmが最低必要
ポットをそのまま地面に置くと、底なしポットの場合や底つきポットの場合でもポット下部の小穴から土中に根が伸び、ポットの意味が無くなる。根を剪定する必要が生じる。
スタンプ苗
根株苗
枝葉と幹の上部をすべて切り捨てて、腋芽が 2、3 個ある程度の地上部(地上高 10cm 前後)と細根を除いた主根のみの地下部 雨緑林に分布する樹種が多い。チークが有名
日本の場合、クヌギやコナラをスタンプ苗にすると、単幹に仕立てやすい。(多幹になりやすい)
持ち運びが容易。
植栽後、降雨が無いと活着率が著しく低下する。


良い苗木とは、
・幹がまっすぐであること。
・頂芽が完全であること。
・枝葉が四方に均等に分岐していること。(ヒノキを除く)。
・固有の色・光沢を持っていること。(健康そう、元気そうに見える)
・裸根苗の場合、主根が短く、側根、細根が多いこと。
・梢頭部が徒長していないこと
・裸根苗の場合、鳥足状の根でないこと。
・コンテナ苗、チューブ苗、ポット苗の場合、根鉢に根がよく回っていること。根が絡まっていないこと
・T/R率(地上部重量/地下部重量)が低いこと。
・裸根苗、ポット苗の場合、H/D率、比較苗高(苗高/根元直径)が小さいこと。
・病虫害や損傷がないこと。
・適切な規格であること。
・遺伝的に優れていること。(品種系統が良いこと。)
・着花結実していないこと。


※スギの苗木の色は、秋~冬季にかけて、低温条件下で直射日光を受けると、葉が褐色を呈する。これは、低温条件下における光ストレスが緩和される為と言われてる。晩秋や初春など、植栽した苗木が低温に晒される時期の植栽において重要となっている。
※形状比が高く、100 を超えるような苗木では、植栽初年は根元を太くする肥大成長を優先させる。翌年以降、形状比が次第に減少すると樹高成長も肥大成長に合わせて促進させると言われている。




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