きこりの森林・林業の教科書
②日本の森林は誰のもの?

はじめに 森林管理 国有林の話 民有林の話 土地問題 林政の歩み 法制度 税金
森林・林業に関連する法律 森林法 林業基本法 森林・林業基本法 分収方式による造林と育林 メモ
森林法と林業基本法の基本的な違いは、
森林法 ①行政法規
②公益制限の規定には保障の制度も備わっている
➂罰則規定あり
林業基本法 ①産業としての林業の振興のための産業法
②宣言法
➂林業構造改善事業、入会林野近代化事業
1.制定の社会的背景
 日本は江戸時代、明治維新を経て資本の蓄積過程をセテ、明治30年(1897年)前後に産業資本の確立を見た。その一方で、寄生地主制も確立期を迎えており、日本資本主義の飛躍的発展の基礎固めが出来る頃だった。

 明治政治府は、発足後に全国各地で乱伐が起こったが、有効な取締法令が無く、明治15年(1882年)にフランスの森林法を模範とした森林法草案が出来たが、公布には至らなかった。

 その後、紆余曲折を経て、日本古来の制度を元に、ドイツ、オーストリア各国の森林法を参考に、明治30年(1887年)に初めて森林法を公布した。

 条文には、営林の監督、保安林、森林警察、罰則が主な内容であった。

 明治40年(1907年)に、一部修正、土地の使用及び収用、森林組合が条文に追加され、改正森林法が公布された。

2.保安林制度
(1)昭和26年(1951年)現行森林法の制定
 旧森林法の趣旨を踏襲しつつ、保安林の指定目的を追加編入(指定)、解除の権限委任関係等の手続きを改正した。

(2)昭和37年(1962年)森林法の改正
 指定施業要件の指定、保安林における植栽の義務を明記した。

3.森林法での定義
 「森林」とは、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹。前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地

森林所有者」とは、権原に基き森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者をいう。

国有林」とは、国が森林所有者である森林及び国有林野の管理経営に関する法律に規定する分収林である森林をいい、「民有林」とは、国有林以外の森林をいう。

4.森林法の罰則
森林法の罰則は、以下の通りです。森林管理署の「署」は警察署と同じで、森林官は、逮捕権を有していることを意味しています。
条項 行為 対象条項  罰則
197条 森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者 3年以下の拘禁刑
30万円以下の罰金
198条 森林窃盗が保安林の区域内において犯した場合 5年以下の拘禁刑
50万円以下の罰金
199条 森林窃盗の贓物を原料として木材、木炭その他の物品を製造した場合、その物品は、森林窃盗の贓物とみなす。
200条 民法第196条(占有者による費用の償還請求)の規定は、森林窃盗の贓物の回復には適用しない。
ただし、善意の取得者についてはこの限りでない。
民法196条
201条 森林窃盗の贓物を収受した者 3年以下の拘禁刑
30万円以下の罰金
森林窃盗の贓物の運搬、寄蔵、故買又は牙保をした者 5年以下の拘禁刑
50万円以下の罰金
202条 他人の森林に放火した者 2年以上の有期拘禁刑
自分の森林に放火した者 半年以上7年以下の拘禁刑
自分の森林に放火し、他人の森林まで延焼したとき 半年以上10年以下の拘禁刑
自分の森林に放火しtあ森林が保安林であるとき 1年以上の有期拘禁刑
203条 火を失して他人の森林を焼燬した者 50万円以下の罰金
火を失して自己の森林を焼燬し、これによつて公共の危険を生じさせた者 50万円以下の罰金
204条 197条、198条、202条の未遂罪 197条
198条
202条
205条 森林又は森林に接近している政令で定める範囲内にある原野、山岳、荒廃地その他の土地においては、その森林又は土地の所在する市町村の長の許可無く、火入れした場合 21条
第一項
20万円以下の罰金
保安林の場合は30万円以下の罰金
森林又は土地において火入をする者は、あらかじめ必要な防火の設備をせず、且つ、火入をしようとする森林又は土地に接近している農林水産省令で定める範囲内にある立木竹の所有者又は管理者にその旨を通知しなかった場合。 22条
許可無く火入れをした結果、他人の森林まで延焼したとき 21条
第一項
22条
30万円以下の罰金
保安林の場合は50万円以下の罰金
206条 都道府県知事の許可を受けずに、地域森林計画の対象となつている民有林において開発行為(土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で、森林の土地の自然的条件、その行為の態様等を勘案して政令で定める規模をこえるものをいう。以下同じ。)をしようとする者 10条2
第一項
3年以下の拘禁刑
300万円以下の罰金
違反して開発行為をした者、又は偽りその他の不正な手段により開発行為をした者 10条3
都道府県知事の許可を受けずに、保安林において、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、下草、落葉若しくは落枝を採取し、又は土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更したもの 34条
第二項
(44条)
都道府県知事の許可を受けずに、保安林において、違反して開発行為をした者、又は偽りその他の不正な手段により開発行為をした者 38条
第二項
207条 都道府県知事の許可を受けずに、保安林又は保安施設地区の区域内の立木を伐採した者 34条
第一項
(44条)
150万円以下の罰金
都道府県知事の許可を受けずに、の規定に違反し、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、又は下草、落葉若しくは落枝を採取する行為をした者 34条
第二項
(44条)
不法行為(違法伐採)に対する都道府県知事の命令を無視した者 38条
第一~四項
208条 届出書の提出をしないで立木を伐採した者
市町村森林整備計画に適合しない方法を行った者
10条8
第一項
100万円以下の罰金
伐採後の造林を行わない者 10条9
第三項、四項
禁止命令に違反し、立木竹の伐採又は土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為をした者 31条
(44条)
届出書の提出をしないで択伐による立木の伐採をした者 34条2
第一項
(44条)
届出書の提出をしないで間伐のため立木を伐採した者 34条3
第一項
(44条)
209条 民有林について保安林の指定があつたときは、その保安林の区域内にこれを表示する標識を設置しなければならないが、その設置を拒む、又は妨げた森林所有者。
設置した標識を移動し、汚損し、又は破壊した者
39条
第一項、二項
50万円以下の罰金
210条 届出書に記載された伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況について、市町村の長に報告しなかった者 10条8
第二項、三項
30万円以下の罰金
伐採及び伐採後の造林の届出を市町村長に提出をしない者 34条
第九項
(44条)
伐採を都道府県知事に届け出ない者
森林所有者で無い場合、森林所有者に通知しない者
34条
第八項
(44条)
211条 197条(未遂を含む)、198条(未遂を含む)、201条の罪を犯した者 197条
198条
201条
情状により拘禁刑及び罰金刑を併科
212条 法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第205条から第210条までの違反行為をしたとき 205条

210条
法人又は人に対して各本条の罰金刑
法人でない団体の場合 法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用
213条 新たに当該森林の土地の所有者となつたにもかかわらず、必要な書類を届出をせず、又は虚偽の届出をした者 10条7の2
第一項
10万円以下の過料

【贓物(ぞうぶつ)】犯罪行為によって手に入れた物品。贓品(ぞうひん)
【牙保(がほ)】 売買の取次をして、その中間に立って利をかせぐこと。 また、その人。 仲買
【焼燬(しょうき)】焼くこと。燃やすこと。焼き払うこと
【過料(かりょう)】行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すもの。前科は付かない。



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