きこりの森林・林業の教科書
②日本の森林は誰のもの?

はじめに 森林管理 国有林の話 民有林の話 土地問題 林政の歩み 森林・林業に関連する法律 税金(財源)
森林の定義
SDGs
森林経営管理制度
土地問題の歴史
委託林制度
共用林野制度
分収造林制度
境界の管理
県有林
市町村林
財産区有林
個人所有林
企業所有林
林業普及員制度
不在村地主・所有者不明 戦後の林政
年表
水源税
都道府県の森林環境税
国の森林環境税・森林環境譲与税
たばこ特別税
水道料金

【水源税】
 昭和61年(1986年)に林野庁が、荒廃林地などの森林整備、複層林造成、奥地水源林の整備、間伐の推進を目的とした「水源税」を提案します。その翌年の昭和62年(1987年)には、農林水産省と建設省が、ダムなどの上流にある1~3号保安林(水源涵養保安林、土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林)を対象とした奥地水源林の整備、河川の改修、ダムや流況調整河川の整備、砂防施設の整備を目的とした「森河緊急税」を提案します。
 平成4年(1992年)には、36町村の連盟で、地方交付税に回す所得税の割合を増やして、過疎地域の林業の維持のための「森林交付税」を提案します。
 平成15年(2003年)には、森林交付税創設促進連盟が、水道水、工業用水、水力発電、化石燃料の使用者に間接税を課して、森林保全に税収を充てる提案がありました。

 これらは、提案したものの、失敗した税金です。失敗した理由は、国民の税金に対するアレルギーと一般に言われていますが、水を使う産業からの反対、国民に対する合意に向けた説明不足などが言われています。

【都道府県の森林環境税】
 上述の森林整備のための資金確保が国レベルで出来ない=何も出来ないという事態を避けるため、平成15年(2003年)に、高知県が、森林環境税を導入します。県民税超過課税として、特定の事業者狙い撃ちの税金ではなく、県民から幅広く徴収すると言うことで始めます。
 この背景に、森林率が高く林業が地域の基幹産業であるにもかかわらず、高齢化、担い手不足の課題を抱え、林業経営が成り立たなくなっている現状を改善するため税金でした。



都道府県における導入一覧



【国の森林環境税・森林環境贈与税】
 平成31(2019)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立。
 その理由は、森林の有する公益的機能は、地球温暖化防止、国土の保全や水源の涵養等、国民に広く恩恵を与える存在です。このため、適切な森林の整備等を進めていくことは、国土や国民の生命を守ることにつながることは、国民に理解されている。しかし、その一方で、所有者や境界が分からない森林の増加、担い手の不足等が大きな課題です。
 このような現状の下、平成30(2018)年5月に成立した森林経営管理法を踏まえ、パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税が創設された。

 「森林環境税」は、令和6(2024)年度から個人住民税均等割の枠組みを用いて、国税として1人年額1,000円を市町村が賦課徴収することとされています。

 また、「森林環境譲与税」は、喫緊の課題である森林整備に対応するため、「森林経営管理制度」の導入時期も踏まえ、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金を原資に、令和元(2019)年度から譲与が開始され、市町村や都道府県に対して、私有林人工林面積、林業就業者数及び人口による客観的な基準で按分して譲与されています。

 森林経営管理制度とは、手入れの行き届いていない森林に対し、市町村が森林所有者から経営管理の委託を受けて、森林組合等の林業経営者への再委託や、市町村による公的な管理を行うことで、森林の経営管理を確保して、林業としての地場産業の盛り上げ、森林の適切な管理による健全化を図る制度。

主な取り組み
項目 取り組み
間伐等の森林整備 意向調査
意向調査準備
アンケート
聞き込み
間伐等による森林整備 間伐の実施
森林作業道の整備
林道の整備
人材の育成・担い手の確保 研修
木材利用
普及啓発
公共建築物の木造化、木質化 木材利用
森林・林業・木材普及活動 イベント
講習会

 県レベルでは、市町村に提供する森林情報の精度向上・高度化、事業支援団体への運営支援、地域林政アドバイザーの市町村への派遣、市町村職員向けの研修の実施を行っている。
 この地域林政アドバイザー制度は、市町村や都道府県が、森林・林業に関して知識や経験を有する者を雇用する、あるいはそういった技術者が所属する法人等に事務を委託することを通じて、市町村の森林・林業行政の体制支援を図るものです。
 この取組を行う市町村や都道府県に対しては、特別交付税により雇用や委託の経費が措置されます。

資格は、地域林政アドバイザー対象者の要件
以下のいずれかに該当する技術者の方、又はその技術者が在籍する法人が対象です。
・森林総合監理士登録者又は林業普及指導員資格試験合格者(林業改良指導員及び林業専門技術員を含む)
・技術士(森林部門)
・林業技士
・認定森林施業プランナー
・地域に精通する方で、林野庁が実施する研修

【たばこ特別税】
たばこ税の内訳には、国たばこ税(23.3%)、地方たばこ税(都道府県たばこ税3.7%、市町村たばこ税22.7%径26.4%)、たばこ特別税(3%)、消費税(9.1%)から構成されており、販売価格の61.8%が税金です。
 このうち、たばこ特別税は、日本国有鉄道清算事業団及び国有林野事業特別会計の負債を、一般会計に承継させることに伴い生じる負担を補うために創設さ、平成10年12月1日より課税。

 ちなみに、市町村たばこ税は、使い方が限定されている目的税とは異なり、徴収した市町村で自由に使って良い税金のため、一般財源に充てられ、日常生活の基盤整備や、公共サービスの質の向上に利用しています。例えば、小中学校や図書館、博物館、美術館などの教育施設、高齢者や障害者向けの福祉施設やそのサポート、消防費、道路や下水道などの管理などです。




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