きこりの森林・林業の教科書
②日本の森林は誰のもの

はじめに 森林管理 国有林の話 民有林の話 土地問題 林政の歩み 森林・林業に関連する法律 税金
基本情報 都道府県有林 市町村有林 財産区有林 個人所有林 企業所有林 林業普及員制度 メモ
現状 森林経営計画 メモ
【森林経営計画】
森林経営計画とは、森林所有者、もしくは、森林の経営の委託を受けた者(森林所有者が必ずしも計画を立てる能力を持っているわけでは無いため)が、自らが森林の経営を行う一体的なまとまりのある森林を対象として、森林の施業及び保護について作成する5年を1期とする計画です。
この森林経営計画は、所属する市町村長に提出します。
集まった森林経営計画は、その後、市町村森林整備計画に使用されます。そして、更に、各市町村から集まった市町村森林整備計画は、都道府県の地域森林計画に使用されます。更に、国有林の森林計画と結びつけることで、全国森林計画になります。その結果、国の長期的かつ総合的な政策の方向・目標となる「森林・林業基本計画」に結びつきます。

主な記載事項は、

・森林の経営に関する長期の方針
・計画対象森林の現況並びに間伐及び主伐の施業履歴
・伐採(主伐間伐)、造林及び保育の実施計画
・鳥獣害防止森林区域における鳥獣害の防止の方法
・森林の保護に関する事項
・森林の施業及び保護の共同化に関する事項
・路網整備に関する事項
・森林の経営の規模拡大及びそのために必要な路網整備等の目標(必要に応じて記載)
・森林の保健機能の増進を図るための公衆の利用に供する施設(森林保健施設)の整備

になります。

提出先は、森林の所有形態によって異なります。
対象森林の所在地 認定申請書 申請の時期
一つの市町村の区域内にある場合 市町村長 森林経営計画の始期の20日前
二つ以上の市町村の区域にわたり
かつ一つの都道府県の区域内にある場合
都道府県知事 森林経営計画の始期の30日前
複数の都道府県にわたる場合 農林水産大臣 森林経営計画の始期の60日前



書類の提出先
提出先 対象者
A県 A市長 Dさん、Gさん、Jさん
B村長 Bさん、Eさん、E”さん
県知事 Fさん
農林水産大臣 Lさん



作り方の手順
準備 森林簿・森林計画図
登記簿(所有者情報) 土地の所有者が正しいかの確認
公図 現地調査の参考にする。
航空写真 現地調査の参考にする。
地質図 現地調査の参考にする。
断層がある場合、林道作設の注意点となる。
現地調査 森林簿情報の修正 現地調査で状況を確認する。
異なる場合は修正する。
搬出・切り捨て・手入れ無し 5年間で作業するかしないかを色付けする。
主伐地区、搬出間伐地区、切り捨て間伐地区
天然林と人工林等
地形の書き込み 1/5000の森林計画図の等高線は、作業道を作るための地形やヘアピンカーブの設置場所を検討するには、十分ではない。このため、沢地形、崖地形等の情報を記載する。
土場の確認 土場の設置可能な位置をチェックする。
計画を作るのは、
○森林所有者が単独で計画を作成
○森林の経営の委託を受けた者が単独で計画を作成
○森林所有者と森林の経営の委託を受けた者が共同で計画を作成
○複数の森林所有者が共同で計画を作成
○複数の森林の経営の委託を受けた者が共同で計画を作成

【申請書類】
(1)森林経営計画認定請求書
(2)森林経営計画書
(3)添付書類
  ①計画図面(計画対象森林の所在、路網整備等の状況、主伐を行う区域)
  ②森林の経営の委託を受けた者であることを証する書面(森林の経営の委託を受けた者が作成する場合に限る。)
  ③路網整備等につき、森林の土地の所有者の同意があったことを証する書面(他人の土地を利用する場合。)

【認定の基準】
 市町村森林整備計画(ゾーニング)に合致していることが前提。
 チェック項目として、

収穫の保続の基準  市町村の独自ルール 公益的機能別森林施業
伐期の延長が望ましい森林
(水源涵養機能の促進)
山地災害防止、土壌保全、快適環境、保健文化  
長伐期施業が望ましい森林 複層林施業が望ましい森林(非択伐) 複層林施業が望ましい森林(択伐) 保健文化機能増進
特定広葉樹の育成が望ましい森林
主伐 適正な林齢での主伐の基準 標準伐期齢以上 標準伐期齢+10以上 標準伐期齢の2倍以上 標準伐期齢以上
伐採率の40%以下の択伐
適正な伐採の方法 【皆伐の場合】
伐採跡地が連続して20haを越えないこと
伐採率30%以下の択伐
伐採後の造林を天然更新による場合
伐採率70%以下の伐採
伐採後の造林を人工植栽する場合
適切な伐採立木材積 伐採材積が年間成長量(カメラルタキセ式補正)に相当する材積に5を乗じて得た材積以下 標準伐期齢における立木材積が確保されること
伐採材積が年間成長量(カメラルタキセ式補正)に相当する材積に5を乗じて得た材積の100分の120以下 標準伐期齢の立木材積に0.5を乗じて得た材積以上の立木材積が確保されること 標準伐期齢の立木材積に0.7を乗じて得た材積以上の立木材積が確保されること
立木材積:
下層木を除いてRy0.75以上
伐採材積:
Ry0.65以下となるよう伐採
適正な間伐の基準 市町村森林整備計画に定められた間伐の間隔で実施しているか 単層林の場合
Ryが0.85以上の森林において、Ryが0.75以下になるように間伐しているか
市町村森林整備計画に定められた間伐の間隔で実施しているか
適正な植栽の基準 主伐実施の5年以内に更新が行われているか
【適切な主伐】
伐採立木材積の上限(法正林思想)
カメラルタキセ式: 標準伐期齢以上の高齢林が多い場合は成長量以上に標準伐期齢未満の若齢林が多い場合は、成長量より少ない上限設定
  Z 当該計画的伐採対象森林の年間成長量(ただし、木材生産機能維持増進森林にあっては100分の120を乗じて得た値) 
Vw 当該森林経営計画の始期における当該計画的伐採対象森林の立木の材積
Vn 当該計画的伐採対象森林と同一の樹種の単層林が標準伐期齢に達しているものとして算出される当該単層林の立木の材積の2分の1に相当する材積
T 当該計画的伐採対象森林につき定められている標準伐期齢を乗じて得た数値の総和を当該計画的伐採対象森林の面積で除して得た数値
隣接する場合

19haが2ヵ所では無く、20ha以下と見做さず、一箇所として扱う。

このようなグリーンベルトは、境界として認識されない。


主伐量の上限は、成長量の範囲内が基準
・森林経営計画における主伐量の上限は、森林の成長量を基本として、現況の蓄積が標準よりも多い場合は、より多くの伐採が可能。
・市町村森林整備計画で「木材生産機能維持増進森林」にゾーニングされている森林は、成長量を1.2倍として計算が可能。
・天然林など伐採を予定しない森林を計画に加えることにより、その蓄積を活用して主伐上限を増やすことも可能。
複層林の場合
択伐式複層林施業の森林 複層林施業の森林
・択伐率(材積率)
 30%以下(伐採後植栽の場合は40%)
・維持材積
 標準伐期齢の立木材積の70%以上
・伐区の形状
 

 
・択伐率(材積率)
 70%以下
・維持材積
 標準伐期齢の立木材積の50%以上
・伐区の形状
 

 
【適切な間伐】
人工林の場合、0.3ha未満の森林は対象外。
林冠が閉鎖している森林で、5年以内に樹冠疎密度が8割以上の森林
このため、5齢級(25年生)未満の若齢林や、本数調整が終了した老齢林、過密化していない森林、気象害や成育不良で林冠が閉鎖していない森林は、対象外となる。
また、計画期間内に主伐を予定する森林も対象外となる。

間伐の実施面積の下限
a1 計画的間伐対象森林のうち標準伐期齢未満の森林面積
a2 計画的間伐対象森林のうち標準伐期齢以上の森林面積
T1 市町村森林整備計画に定める標準伐期齢未満の森林の間伐間隔
T2 市町村森林整備計画に定める標準伐期齢以上の森林の間伐間隔
※標準伐期齢未満の森林であれば5年以内、標準伐期齢以上の森林であれば10年以内に間伐した場合は基準を適用しない。

間伐下限の計算方法

A: 間伐の下限面積基準の計算からは、
①計画期間内に主伐を予定する森林
②幼齢林・老齢林、被害林など、林冠が閉鎖せず間伐が必要ない森林
③0.3ha以下の小規模な森林
④過去一定期間内に間伐した森林
を除外することは可能
B: 市町村の判断(市町村森林整備計画)で、実態を踏まえて間伐間隔を長めに設定することも可能。
このため、間伐下限面積自体を小さくすることも可能。
例えば、15年に1回とすれば、5年間に間伐すべき面積は、1/3に。20年に1回とすれば、1/4となる。


【植栽】

伐採方法
材積伐採率
 
造林期間
人工林 天然更新
天然下種更新 萌芽更新
皆伐
(人工林)
2年以内
※1
5年以内
※3
5年以内
※3
皆伐
(天然林)
70%越え
70%以下
択伐 30~40% 5年以内
※2
×認定不可
30%以下 5年以内
※3
※1 市町村森林整備計画に適合した植栽であること。
※2 市町村森林整備計画に適合すると共に、材積伐採率に応じた苗木本数を植えること。
※3 期待成立本数の3割、または3000本/haのいずれか小さい本数が確保されること
   これに満たない場合は、2年以内に必要な苗木本数を植栽すること

【鳥獣害の防止】
森林経営計画に定められている造林方法が鳥獣害防止森林区域内において当該森林経営計画の期間内に植栽をすることであるときは、鳥獣害の防止のための防護柵の設置、わなその他の方法による鳥獣害の原因となっている鳥獣の捕獲(殺傷を含む。)その他の当該植栽に係る立木を保護するための措置を実施することとされていること。

イメージ図 記載事項    
区域内の森林で人工植栽を計画する場合は、鳥獣害防止対策の記載が必須
区域内の森林で人工植栽が計画されていない場合は、必要に応じて、鳥獣害防止対策を記載
森林の保護
森林病害虫の駆除及び予防、火災の予防その他の森林の保護等に関する事項鳥獣害防止森林区域以外における鳥獣害防止対策等を記載
     
     
     
     
     
記載されている内容は、①防護柵の設置若しくは維持管理、幼齢木保護具の設置、又は現地調査等による森林のモニタリングの実施等による植栽木の保護措置、②わな又は銃器等による対象鳥獣の捕獲となる。

【計画の変更と遵守】
項目 内容
計画の変更 対象森林や作成主体が追加された場合は変更が必要 計画対象森林について自ら森林の経営を行わなくなった場合、又は同一林班又は区域内 等で新たに自ら森林の経営を行うこととなった森林がある場合は義務的変更
施業の実施基準を満たす範囲内で自主的変更が可能 作業路網等に係る計画事項が追加され、実行性の高い計画の作成を求められる反面、施 業の実施基準を満たす範囲内で施業の計画箇所や計画量の自主的変更が可能。
計画の遵守 必要な施業が確保されるよう施業の実施基準を厳格化 ・伐採立木材積に加え、間伐面積の下限について5年間の計画量を施業の実施基準として規律
・箇所別の伐採方法や植栽方法の規律を強化(例えば、植栽によらなければ適確な更新が困難 な森林以外に対しても5年後の更新確保を求める等)
認定基準を満たさない状況が明らかとなった時点で認定を取消 施業の実施基準を満たさず認定取消となった場合には、補助金の返還
災害等で基準を満たさない場合でも遵守の範囲として運用 「災害その他やむを得ない理由による場合」として、実測等により実行量が計画量 と異なることとなった場合等のほか、林道の整備状況や木材価格の動向など所有者の責によ らない理由で基準を満たさなくなった場合でも、遵守されているものとして運用

【届出の内容】
森林経営計画の対象森林で立木の伐採、造林、立木の譲渡、作業路網の設置を した場合に届出書を市町村長等に提出する。
受け取った役所は、•届出書に記載されている事項について、森林経営計画に基づいた施業等を行ったかどうかを確認する。
所在場所 都道府県
市郡・町村
字(大字)
地番
伐採 時期
主伐・間伐
伐採面積(ha)
樹種
伐採立木材積(m3
造林 時期
造林方法
植栽本数(本)
造林面積(ha)
譲渡 時期
伐採の時期
伐採面積(ha)
樹種
林齢
伐採立木材積(m3
作業路網の設置 時期
路線名
設置延長(m)
備考
【メリット】
税制 所得税:山林所得に係る森林計画特別控除 ① 立木の伐採等に係る収入金額(伐出費、譲渡経費を除く。)の20%相当額
(収入金額が2,000万円を超える部分については10%)
② 立木の伐採等に係る収入金額(伐出費、譲渡経費を除く。)の50%相当額から必要経費(伐出費、譲渡経費及び森林経営計画が定められている区域内に係る被災事業用資産の損失の金額を除く。)を控除した残額

申告の際に必要な書類

・森林経営計画に基づく伐採・譲渡である旨の証明書
・伐採・譲渡した山林の林地の測量図
・森林経営計画書の写し
相続税:延納等の特例 相続税額が10万円を超え、金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供することにより、年賦で納付することができます。これを延納といいますが、この延納期間中は利子税の納付が必要となります。
課税価格の計算特例
公益的機能別施業森林の評価の特例 控除率
20% ・水源涵養機能維持増進森林
・水源涵養機能維持増進森林以外の森林のうち、択伐以外の複層林施業森林及び長伐期施業森林
40% ・水源涵養機能維持増進森林以外の森林のうち、特定広葉樹育成施業森林及び択伐複層林施業森林
相続税の納税猶予
(規模拡大目標を定めた属人計画のみ)
金融 日本政策金融公庫資金等における融資条件の優遇
補助金等 森林環境保全直接支援事業 人工造林(地ごしらえ、植栽)等
下刈り(10年生以下)
枝打ち(30年生以下)
雪起こし(25年生以下)
倒木起こし(25年生以下)
除伐(25年生以下)
保育間伐(60年生以下又は
伐採木の平均胸高直径18cm未満)
間伐(60年生以下)
更新伐(90年生以下)
付帯施設等整備
・ 鳥獣害防止施設等整備
・ 林内作業場等整備
・ 林床保全整備
・ 荒廃竹林整備
森林作業道整備

実施条件は、森林経営計画の提出と、実施箇所1ha当たり平均10m3以上の木材を搬出
森林整備地域活動支援交付金




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