きこりの森林・林業の教科書



①日本ってどんな国?

火山・地震について 地質・土壌について 植生について 動物について 日本人について
動物について

 日本の国土の2/3は、森林で覆われており、さらに7000もの離島を含む島国です。南北に長い列島には、亜熱帯地域から温帯、寒冷地域までの広がりに合わせ、山脈による標高差もあるため、沢山の固有種が生息しています。
 また、日本の植物は5~6000種と多種多様に存在し、特に落葉広葉樹が多いのも特徴です。このため、多様な餌も提供しています。

 固有種が多いのも特徴で、小笠原諸島や西表島のように、何万年も隔離された島での独自に進化した生き物(オガサワラオオコウモリ、ヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコ等)、生きた化石として氷河期を生き残り、定住している遺存種(ニホンカモシカ、ライチョウ、ギフチョウ)がいます。

 また、日本近海の海の容積は、世界の海の1%に満たない大きさですが、親潮や黒潮、海溝等の存在があるため、海洋生物は、13%程度を占めています。

日本 地球 割合
哺乳類 127 5,513 2.3%
鳥類 700 10,425 6.7%
爬虫類 99 10,038 1.0%
両生類 63 7,302 0.9%
魚類 4,200 32,900 12.8%
昆虫 37,000 1,000,000 3.7%
甲殻類 5,400 47,000 11.5%
軟体動物 8,000 85,000 9.4%
出典元によっては、数値が異なります。


1.哺乳類
 亜熱帯から亜寒帯、0~3000mの標高差があり、多様な生態環境と、大陸との接続と分離を繰り返してきた複雑な成立過程から、哺乳類の種類は豊富となっており、土着の哺乳類は、23科60種109種(クジラ類を除く)、陸生種20科53属99種(アザラシ、トドを除く)となっており、世界で知られている哺乳類全体の2.4~2.6%と言われている。

 特徴として、①草原・砂漠性の種はいない。理由は、降雨量に恵まれており、乾燥生態系が発達することが、森林が優先しているためである。②大型肉食獣がいない。理由は、島嶼化のため、食物連鎖のピラミッドが小さく、大型になれなかったと推測される。

 日本は、2つの地理区を持っています。一つは、旧北区で、トカラ列島以北の本土域が含まれ、温帯から寒帯に起源を持つ種が主体になっている。もう一つが、東洋区で、トカラ列島以南の奄美諸島、南西諸島が含まれ、亜熱低から熱帯を起源に持つ種が主体となっています。
八田線
(宗谷線)
宗谷海峡を東西に横切る動物区の境界線
両生類、爬虫類などの分布の違いより
ブラキストン線 本州と北海道の間に引かれる境界線
対馬海峡線
(対馬線)
対馬海峡に引かれた分布の境界線
大陸系の哺乳類ツシマヤマネコ、爬虫類アカマダラなどが対馬に分布するため。
朝鮮海峡線 朝鮮半島との間の境界線
対馬には本州・九州等と共通する種も多く
渡瀬線 トカラ構造海峡とも呼ばれる、トカラ列島南部の悪石島と小宝島の間
ニホンザル、ムササビ、ニホンカモシカの南限
ニホンマムシとハブの境界
本州南部線 サンカメイガの分布北限


 北海道独自の固有種はほとんど存在せず、生息種の61%は、サハリンやシベリアなどの北方域に同類が存在しています。残りは、本土の共通種となっている。
 朝鮮半島に近い対馬を除き、本州・四国・九州およびその属島の哺乳類の基本的な種の構成は同じです。土着種の42%が、固有種となっています。なお、朝鮮半島や中国東北部、その北方に類縁を持つグループと、中国南部からヒマラヤ、その南方に起源を持つグループに分かれています。
 対馬は、朝鮮半島に近いため、日本の他の地域では見られない数種の朝鮮系の種が存在してます。

動物地理区

地理区 地域 特有の動物 備考
エチオピア区 サハラ砂漠以南のアフリカ大陸。マダガスカル島
アラビア半島南部、イラン南部も含まれる。
アミメキリン
カバ
ダチョウ
哺乳類の3分の2、鳥類の5分の3が固有種と言われている。
大型種が多いのも特徴
旧北区 ユーラシア大陸の中央鰺からヨーロッパとサハラ砂漠以北のアフリカ大陸
黄河流域は旧北区
レッサーパンダ
フタコブラクダ
約5,000万年前まで、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は陸続きであったため、ヒグマやタイリクオオカミ等、共通して分布する動物が生息している。
東洋区 ヒマラヤ山脈以南のアジア、東南アジア、中国南部、台湾
奄美大島、沖縄諸島が含まれる。
長江流域は東洋区
マレーグマ
クジャク
ヒマラヤ山脈等の高い山が壁となり、季節風で海から運ばれる湿度のある暖かい空によって、熱帯雨林からモンスーン林、マングローブ林等、様々な森林で構成された生態系が特徴
オーストラリア区 オーストラリア大陸、ニュージーランド、ニューギニア島 コアラ
カモノハシ
ヒクイドリ
5,000万年前に、他の大陸より早く孤立したため、原始的な特徴を残した有袋類や単孔類、走鳥類がいるのが特徴。
オセアニア区 オーストラリア区を除く島嶼部
小笠原諸島も含まれる。
孤島に固有種が多いのが特徴
新北区 北アメリカ大陸 ボブキャット
オグロプレーリードッグ
約5,000万年前まで、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は陸続きであったため、ヒグマやタイリクオオカミ等、共通して分布する動物が生息している。
新熱帯区 メキシコ以南から南アメリカ大陸
フロリダ半島
オオアリクイ
カピバラ
フタユビナマケモノ
約6,500万年前にアフリカ大陸から分かれ、その後約500万年の間は孤立した後、北アメリカ大陸と陸続きになった。南北に7,000㎞の長さのアンデス山脈がある。
南極区 南極周辺 ペンギン
アザラシ
クジラ
苛酷な環境であるため、特別に環境順応した種が生息している。


2.鳥類
 日本列島には、北極圏、アラスカ、カムチャッカ半島、ユーラシア大陸(シベリア、中国)、朝鮮半島、マレーシア、フィリピン、南半球のオーストラリア等から越冬、繁殖、中継等、様々な目的を持った鳥類が約500種、亜種を含めると600種が飛来しています。
 このため、年間を通じて同一地域に住んでいるカラス、キジ、スズメ等は「留鳥」、小規模な季節移動するウグイス、カケスは、「漂鳥」、夏に日本に来て繁殖し、冬に南に移動するオオルリ、ツバメ、ホトトギスは、「夏鳥」、秋に北方から渡来し、越冬して春に戻るオオハクチョウ、ツグミ、マガン等は「冬鳥」、渡りの途中で寄るキョウジョシギ、ソリハシシギ、トウネン等は、「旅鳥」、本来の分布域から台風で運ばれてきたり、間違った群れに紛れ込んでくるオオグンカンドリ、セグロアジサシ等を、「迷い鳥」と呼んでいます。

 本州、四国、九州では、留鳥:渡り鳥は、40:60、北海道と琉球列島では、20:80となっており、渡り鳥が多いのが特徴となっている。この理由は、周囲が海に囲まれていることで、海洋性の鳥類が多い。
 また、国土の約70%が森林となっていることで、森林を主な住処とする鳥類も多く存在している。なお、日本で繁殖する陸鳥(約150種)のうち、2/3の約100種は、何らかのタイプの森林に住んでいる。岩が露出するような場所は、イソヒヨドリとイワヒバリの2種のみで、のこりは、草原や湿地となっている。
 また、標高の違いでも生息している種類が異なっており、高山帯、亜高山帯、低山帯に分かれている。

 固有種については、アオゲラ、アカコッコ、カヤクグリ、キジ、コマドリ、ヤンバルクイナ等があります。これらの多くは、起源の古い鳥といわれており、他地域にもいたものの、既に絶滅してしまって、日本にしか残っていない、遺残固有と言われている。

3.両生類&爬虫類
 イモリやサンショウウオ等の有尾目は、19種類、カエル等の無尾目は、39種類の両生類と、カメ目は、10種(海洋性5種)、有鱗目は、ヘビ亜目42種(海洋性9種)、トカゲ亜目32種となっている。

 両生類の特徴として、サンショウウオ類が多いことが特徴で、世界最大の両生類(現生)として、オオサンショウウオがある。温帯を起源としており、移動能力が乏しい中、日本の地形的特徴である山系が発達し、水系が数多くあることで、各地で分化が進んだとみられるとともに、島国であることで、新しい種が侵入しなかったことも、原始的なオオサンショウウオが生き残ったと言われています。この分化していった結果、北海道に生息するエゾサンショウウオが、進化の終点に位置していると言われています。
 
 爬虫類のうち、トカゲやヘビの多くは朝鮮半島経由で、日本に来て独自の変化をしたと言われています。一方、琉球列島の両生類、爬虫類は、大陸から台湾を経て北上しています。
4.昆虫
 日本には、約10万種の昆虫がいると言われていますが、正確な数は分かっていません。
 この10万種の昆虫は、3タイプに分けることが出来、①日本特産種、②東北アジア広汎分布種、③移動性種となる。地質的には、過去に発展した生物の遺存種もある。
 

5.魚介類
 魚類は、世界に2万種ほど存在すると言われており、日本には、川、湖、海を含め3800種いると言われています。
日本の生き物リスト

日本固有種

植物(維管束) 苔類 鳥類 爬虫類 哺乳類 両生類 魚類 戻る


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