きこりの森林・林業の教科書


⑩木材を使おう

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木炭
基礎情報 特性 木炭の灰 木酢液 炭の利用
【木炭の灰】
 ナラ炭の灰には、カルシウムが40%、16%協がカリウム+ナトリウム。この他に、リン、鉄、マグネシウム、マンガンなどの微量要素が含まれている。
区別 ウバメガシ白灰 ナラ黒炭
灰分1.87% 灰分1.77%
木炭に対し 灰分に対し 木炭に対し 灰分に対し
珪酸(SiO2) 0.007 0.36 0.017 0.90
鉄(Fe2O3) 0.007 0.36 0.023 1.76
アルミナ(Al2O3 0.104 5.39 0.004 0.23
チタン(TiO2) 0.001 0.05 0.004 0.23
マンガン(MnO) 0.095 4.92 0.004 0.23
石灰(CaO) 0.630 32.64 0.811 45.62
酸化マグネシウム
(苦土)(MgO)
0.497 25.75 0.089 5.01
カリ+ソーダ
(K2O+Na2O)
0.398 20.63 0.029 16.29
リン酸(P2O5) 0.060 3.11 0.046 2.60
炭酸その他
CO2+etc
0.131 6.79 0.482 27.13
 このため、灰を土壌に施用すれば、大部分が水に溶けるので、ミネラルの補給効果がすぐ現れる。

【有効利用】

<土壌改良>
 昔から農家はカリ肥料として、堆肥に混ぜたり、元肥、追肥に利用。種子にまぶして播種することもある。
 広葉樹の方が針葉樹よりカリ分が多い。
 700度以上で焼いた木灰は、pH8.5~9.5のため、酸性土壌の中和に役立つ。
 農薬や化学肥料の使いすぎで酸性化した土壌や、連絡障害の出ている田畑に灰を散布すると、中和され、微量成分の補給が出来ることで、地力を回復させることに有効。

灰の肥料成分(%)
木灰 ワラ灰 都市のゴミ灰
カリ 11.7 4.5 1.0
リン酸 3.9 2.1 0.9
石灰 2.3 2.3 6.9
岸本定吉「灰の神秘」(1995年)

<釉薬>
 陶器の釉薬として利用。イスノキから疲れるイス灰は、高級品。理由は鉄分が少ないため。代用はゴムの木の灰。

アルカリ 酸化アルミナ 酸化第二鉄 酸化マンガン 珪酸 石灰
瀬戸椿灰 9.4 16.2 5.9 0.4 36.0 19.7
薩摩イス灰 2.2 5.1 0.4 0.9 33.1 47.3
砥部楢灰 9.1 1.3 0.4 1.4 6.2 38.3
有田イス灰 0.7 1.5 0.3 0.01 38.5 55.5
高取土灰 5.2 9.1 3.0 3.9 2.6 46.7
高取樫灰 1.0 2.1 0.3 3.6 1.7 73.3
高田樫灰 14.4 9.0 2.9 3.4 21.4 40.1
高田松灰 7.2 16.3 3.8 3.2 39.6 23.7
信楽藁灰 4.2 1.2 0.6 0.8 85.3 3.0
九谷いつき灰
(九谷イス灰)
1.0 7.1 0.5 0.1 6.9 71.3
萩イス灰 1.7 6.0 1.3 0.7 23.2 52.5


<茶道>
 茶道の灰は、木灰が使われるが、茶人の好みで樹種が異なる。一般的に、桐のような軽い木や樫のような重い木は避けられる傾向がある。軽さと弾力、ある程度の粘着性を持つ桜灰が珍重される。
 この、粘着性は、灰に含まれているカリウムの作用。

 灰の作り方は、原木を焼いて生灰を作る。それを細かいふるいにかけて、大きい混ざり物を取り除く。
 次に水の中に入れて、よくかき混ぜ、浮き上がったゴミや炭クズを取り除く。
 更に水を足して、根気よくかき混ぜ、比重の重いものを沈殿させ、上層の灰で濁った水だけを取り出し、容器に流し込んで、もう一度灰を沈殿させる。沈殿した灰をよく乾燥させ、その後、細かく叩き、篩い分けて完成。
 夏に作業が行われ、出来上がった灰は冷暗所で冬まで保管。壺に入れて密封しておきます。冬に使ったあと、新しい壺に、冬で出来た灰を入れて保管。これを10年繰り返すと、人前にで競る状態になるとのこと。
 高級品の灰は、30年以上繰り返されたもの。
 
<灰汁抜き>
 野菜や山菜の苦み、渋み、辛み、えぐみを一般にアクと呼び、このアクを取り除くために、昔は、熱湯の中に竈の灰を溶かしたアクジルを使っていた。灰の成分であるカリウムなどのアルカリ成分がもつ洗浄作用を利用したもの。
 タケノコやワラビは、灰汁に漬ける、煮ると繊維が柔らかくなり、水溶性のアク成分が溶け出す。
 緑色の野菜は、葉緑素(クロロフィル)が、アクのアルカリ成分の作用で、クロロフィリンに変化し、鮮やかな緑色になる。
 灰汁や米の研ぎ汁で干し魚(ニシンや鱈)を付けると、魚の脂肪が酸化して増えた遊離脂肪酸を灰汁のアルカリ成分で中和する。

<灰治療>
 熱罨方(ねつあんぽう)という治療法は、腹痛や神経痛の治療に利用される。具体的には、患部に懐炉を当てる療法です。懐炉灰は、桐から焼いた柔らかく燃えやすい粉灰に、木炭、藁灰を加え、助熱材として微量の証跡を加えて紙袋に詰めたものです。木灰粉には、カリ成分の多い麻殻やなすびの茎を原料として物が使われている。カリ成分は燃焼を促進させる触媒効果があるためです。
 使い捨てカイロの桐灰(現小林製薬)の意味は、この灰治療から来ていたのです。

<洗浄剤>
 灰の主成分は、カルシウムとカリウムで、水に溶けるとアルカリ性の水溶液となり、石鹸と同じ洗浄効果があり、石鹸や合成洗剤がなかったころは、灰を食器を洗うときに利用していた。

<保存剤>
 灰干しわかめは、新鮮なわかめに灰を振りかけて乾燥させる灰乾法という方法で、鮮度を長持ちさせる。灰干しワカメが、水で素早く灰を落とすと鮮やかな緑色になるのは、灰のアルカリ成分にある独自の発色作用の結果。日本海側で採れる海素麺(ウミゾウメン)も同じ。
 





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