きこりの森林・林業の教科書



⑫森林を守ろう

概要 病虫害と対策 獣害 気象害 森林火災 竹林対策
主要な病虫害と対策
ナラ枯れ
マツクイムシ
ウサギ
ネズミ
鹿


マニュアル類
冠雪害 火災予防
消火活動
森林保険制度
タケの特徴
タケノコ栽培
竹林の整備
竹の活用
マニュアル類


 竹林対策


タケの特徴 タケノコ栽培 竹林の整備 竹の活用 マニュアル類

竹林の整備

成長力が非常に強い竹の繁殖を抑え、拡大、侵入を防止するための方法

目標は4000本/ha、うち構成は、1~6年生が各600~700本、100本/a、1~6年生が各6~7本
タケノコの林は、2.5~3000本/ha。土が踏み固めると出羽が悪くなるため、歩く場所は特定しておく。

荒廃した竹林の特徴
種類 特徴
モウソウチク 枯竹が10~25%、新竹の発生率は3~11%と低い
マダケ 比較的細く、高密度なため、モウソウチクの放棄林に比べると更に荒れた感じの林相に見える。
天狗巣病に係りやすい


方法 やり方
伐採 8月の成長期に伐採した場合、翌年の竹の太さは細い竹が多くなる。この場合、2年で除去に成功。
3月の成長休止時期に伐採した場合は、太い竹が発生するが、数が少ない。この場合3年で除去が成功
成長期の7~8月に地上部の竹を全て伐採すると、地下茎の伸長を防ぎ、効果的に枯殺できる。この場合、7~8月の皆伐、9~10月と、翌年の7月を目処に竹を伐る。タケノコは出てきたら全て切り取る。

鉈で伐採した場合は、切り口が鋭くて危ないので、地際で切り直すこと。
地下茎の造林地への侵入防止策 地下茎が貫通しない素材としてトタン波板などを埋設する。
深さ50cm程の溝を掘り、埋設資材を設置する。
タケノコの発生時期の4~5月頃に、タケノコを見つけ次第鎌で切り取るか、足で蹴り飛ばす。
薬剤使用 竹の枯殺用に登録された除草剤のグリホサート液剤(ラウンドアップマックスロード、サンフーロン等)を用いて、竹を枯らすことができる。
6~11 月にドリルで竹の稈に穴をあけ、原液5~10mL/本を注入することで、数か月後に竹が枯れる。
夏処理半年後の地下茎は、細根が少なく根の変色も認められることから、本剤は根も衰弱させる可能性があり翌年の再生してくる竹の発生量を減らす効果も期待できる。

竹の根元の周囲に散布して竹を枯らす塩素酸塩粒剤(デゾレートAZ粒剤、クロレートS粒剤等)も手間が少なく有効的な手法。
しかし、劇物であるため取り扱いには十分、注意する必要がある。また、粒剤の散布は風雨や地形条件により散布区域外に飛散・流出し周辺植生等に被害を及ぼす可能性があり、そのような場所では使用を避ける。

なお、除草剤で枯れたタケは硬くなり、伐採に手間が掛かる場合がある。薬剤を撒いた後の翌年のタケノコは食べない。
【伐採時】
作業に必要な道具
 竹用ノコギリ/鉈/鍬(土を耕耘させる)/ロープ/巻き尺/熊手(表層を掻き取る)/箕/救急箱/色別ビニールテープ/測量用ポール

作業時の服装
 長袖、作業に安全な靴(長靴)、ヘルメット、手袋(皮or滑り止め付き軍手)

作業手順
 最初に準備体操
 伐採する竹に印を付ける
 印の順は、枯竹、倒れている竹、老齢竹、細い竹、重なっている竹の順番。
 残す竹にも印を付ける。スプレーもしくはテープ
  竹炭にして農地で利用する予定の場合は、スプレーは避ける。
 最初の伐採場所は、集積場所と歩く場所を確保する場所。

 伐採方向は、根元が搬出できる方向に倒す。ただし、ボランティア作業の場合は倒しやすい方向に倒す。
 初心者には、測量用ポール等の目印を用意し、決められた方向に倒す意識を植え付ける。

 普通のチェーンソーだと、珪酸の堅さですぐに歯が使えなくなる。
 
樹木と同じように、受け口を作る
受け口の反対側に、くさび形の下から2/3の所から切り込む
受け口と追い口の間に節を挟まない。
 重心と違う方向等に倒す場合は、ロープで引っ張る
 引っかかって倒れない場合は、数人で根元を抱えて、反対方向に倒す。
 
 伐採した竹は、スケールや測量ポールなどを使って必要な長さに伐採する。
 撓んでいる竹は、撓んでいる方向から切る。

 次に鉈で枝を払う。先の方の細いのはナタガマを使用する。

 搬出・集積する場合は、平らな場所を予め決めておき、桿と枝は別にする。
 注意すべき点は、崩落、流出する危険のある場所は避ける。

 基本は、1本倒したらその場で玉切り、枝払い、集積まで行う。数本まとめて作業するより事故が起きにくい。

 高い位置で切った場合は、低い位置で切り直す。
 また、節は打ち抜いておく。


地域で考える場合は、残す竹林と残さない竹林に分ける。
残す竹林はタケノコ生産、竹材生産、防災、交流の場などの使用目的に合った竹林整備を行う。
なお、人手不足を解消するため、竹林所有者は竹林を地域や森づくりグループに開放することで、地域の協力を受けながら管理するのが望ましい。
地下茎を掘り取ると、土壌が柔らかくなるため、地下茎が元気になって伸びる

種類 説明 対処法
管理竹林 管理が適切に行われている竹林
放置竹林 かつて管理されていた竹林であるが、現在は管理がされていない竹林。再生可能な竹林 枯死竹、細い個体、古い個体を抜き伐り、健全な竹林として維持
拡大竹林
(拡大先端部)
元々竹林でなかった場所が竹林化した場所
竹の成立本数は少ないが、地下茎の先端が到達しかけていると考えられる竹林
侵入してきた竹を全て伐採し、元の植生に戻す。
木竹混交林 竹林でなかった場所に竹が侵入しつつある場所 樹木の周りの竹を優先的に抜き伐り、元の植生に戻す事を目指す
放置竹林
 放置竹林の伐採は、タケノコが伸びきった時期が適している。この時期は新しい竹を伸ばすために養分が使われ、地下茎の養分が減少するので、翌春の竹の発生が少なくなり、以後の管理を低減できる。
 翌春の竹の発生を少なくする効果は低くなるが、冬季に伐採する方法もある。また、竹材を民具や竹垣等に利用する場合は材質の良い冬期の伐採が適している。

 伐採に係る作業時間は、1本当たりチェーンソーで0.4分、ノコギリ0.7分。伐採後の玉切り、枝払いは、1本当たりチェーンソーが2.1分、ノコギリが7.5分となっている。チェーンソーが効率的なことが分かる。

 注意する点は、蚊の発生を抑えるために、伐採後に残る竹に水が溜まらないようにすること。理想は、地際の節のすぐ上で水平に伐ること。

 伐採後の集積は、利用するのとしないのを分けて集積する。
 効率的に集積するには、伐採した竹を半分程度に切り、伐採した近くに集積すること。支柱用に四隅に、立っている竹の高さ1.5m程度で伐り、その中に積んでいく。
【兵庫県丹波篠山市の取り組み:竹粉砕機の貸し出し】
 兵庫県丹波篠山市では、「竹太郎」「竹次郎」を貸し出している。
 基本無料で、運搬費や燃料費は利用者負担。
 粉砕した竹チップの一部(米袋3袋程度)を市に提供(作業の証明)
 営利利用しないこと
 粉砕した竹は再利用すること
 貸し出し対象は、市内で竹林整備に取り組む自治会等の団体



KCM122SBP
竹の粉状粉砕が可能

【熊本市の取り組み】
事務局の熊本県森林組合連合会が、対応
支援の対象は
・3名以上で構成する団体(森林所有者、地域住民、自治会、法人等)であること。
・対象の森林が熊本市にあり、1000平方メートル以上のまとまりのある里山であること。
・3年間活動を行うこと。
支援内容は、
・竹粉砕機貸出:粉砕処理は地域活動組織の負担
・竹粉砕林内処理:粉砕処理の労力をサポート
・竹粉砕持ち出し:粉砕処理し、粉砕されたチップを竹林外へ持ち出すまでをサポート
・竹材持ち出し:集積された竹材を竹林外まで持ち出すまでをサポート
・竹材持ち出し産業廃棄物処理:集積された竹材を産業廃棄物処理場へ運搬するまでをサポート

【群馬県安中市の取り組み】
 市内に竹林を所有する人又は委任を受けた人が、自主的に行う竹林の管理活動を支援します。
項目 内容
薬剤の供与 竹1本あたり10ミリリットルの薬剤を供与。千本まで対象。
ただし、500m2以内の場合は、追加可能
作業器具、薬剤注入用器具の貸与 竹に穴を開ける電動ドリルと、薬剤を注入する薬剤注入用器具を貸与する。
竹粉砕機の貸与 燃料費は利用者負担
大型は1回2200円 管理費1時間330円
小型は1回1100円 管理費1時間220円
管理費には、切断刃調整、チッパナイフ研磨費等が含まれている。

なお、森林組合に頼んだ場合、1日33000円+運搬費となる。
山羊は、地表5cm以上のタケノコを食べため、放牧による効果が見込まれる。猪のように地中を掘って食べることは無い。





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