きこりの森林・林業の教科書
⑧林業経営を始めよう

はじめに 樹種の種類 苗木から植栽 植栽から保育 間伐から主伐 伐採・搬出 林道管理 安全対策 レクリエーションの森 メモ
基本状況 針葉樹 地拵え 植え付け 初期保育 枝打ち 間伐 複層林 混牧林 マングローブ
広葉樹 地拵え 植え付け 初期保育 枝打ち 間伐 天然更新 混交林 メモ
保育
初期保育として、下草刈り、蔓切り、除伐、雪起こしがある。
下草刈り(下刈り)
日本は、林業に適さない地域にあると言われています。理由は、高温多湿で、陽生植物の繁茂が著しいため、植栽木以上に他の植物が繁茂するからです。

植栽木の生存を保証し、成長を助けるためにも下草刈りは不可欠となります。
一方、北欧や欧州、NZ、半乾燥地では、日本ほど下草刈りの必要性はありません。この他の地域では、下草刈りを軽減するために、陸稲や大豆、蕎麦など、木場作(アグロフォレストリー)をしてきました。

土壌条件の良い場所では、スギ、ヒノキの下刈り期間は5年程度となる。土壌条件の悪いところでは、10年近くかかる場合もある。基本的に、植栽木より周囲の植生が低くなれば、下刈りの必要は無くなる。

下刈りの時期は、土用の丑の頃、(土用の鰻の頃)で、7月下旬~8月上旬となっている。2回実施する場合は、6月下旬~7月上旬と、お盆以降の8月中下旬となる。

道具は、刈り払い機と鎌(柄が短い物と長い物)、機械となる。但し、傾斜地では機械の使用には制限がかかる。


蔓切り
林業では、植栽木の経済的価値を高めるというより、価値を落とさないために、蔓切りをします。
蔓に巻かれると、材の価値が下がるからです。
・肥大成長が異常になる。→チップ材に利用される
・幹が変形する。
・蔓が巻き付いた場所が弱点になり、共有や積雪時に折損被害を受ける。
・樹冠に達すると周囲にも被覆するため、植栽木の成長が阻害される。
・樹冠を覆った蔓の重みで、植栽木の先端が曲がり、幹が曲がる。
・樹冠に達した蔓が、周囲の植栽木も同様の被害を与える。
・草本系の蔓が秋に枯れると、火道になり、林床火災が、樹冠に広がり、大規模火災を招く。
・伐採時に掛かり木が発生する。「上方よし、つるがらみなし」と大声で言って、伐倒する。

初期はこのように巻き付きます。
上へ上へと上がっていきます。
徐々に蔓自身も太くなります。
これで樹冠を超えると光合成が盛んになります。
樹冠に達した蔓はこのように一気に太くなります。 巻き枯らしをする羽目に。
蔓の種類は、以下の通りである。
タイプ 主な植物
寄りかかる 鉤かけ型 カギカズラ
サルトリイバラ
ジャケツイバラ
ノイバラ
よじ登る 巻きひげ型 ヤマブドウ
巻き付き型 アケビ
クズ
サルナシ
ツルウメモドキ
フジ
マタタビ
付着型 イワガラミ
キズタ、
ツタ
ツタウルシ
ツルアジサイ
テイカカズラ

蔓は、非常に早く成長する、あっという間によじ登るため、見つけ次第、除去することを心掛ける。
林業地に入る際は、鉈を携行する。鉈で、幹を傷つけないことに留意する。
適した時期は夏頃で、根茎の栄養分が少なくなっている時期のため、再生力が弱い時期である。
根元から切る。場合によっては、鎌や剪定鋏を使用する。
切った蔓は強引に引っ張らない。梢端を傷つける可能性があるため。
植栽木の根元付近にある蔓は、根元で切ると萌芽する可能性があるため、蔓の茎をぐるぐるに巻いて、植栽木から距離を取る方法もある。
つるの切断面に除草剤処理する場合もある。


除伐
形質の悪い樹形の木や目的樹種以外の侵入種を除去する作業。
年間を通じて行う。



やっかいな竹の侵入。竹の伐採、地下茎が伸びないように、板を地面に打ち込むことも重要。
除伐というより、除去。


途中から二股になっている植栽木も除伐の対象です。

雪起こし
雪圧によって倒伏した幼齢木を雪解け直後に起こす作業。縄などで固定して、木を垂直に育てる作業。
雪解け直後に作業しないと、幹の肥大成長が異常となり、幹に傷が付くなど、木材の価値が落ちる。


倒れた幼齢木の上にある灌木の根元に縄をくくりつけて、起こす。
山側の根の部分を踏み固める。根が浮き上がっていることがあるため。(客土も場合によっては必要)
垂直に起こさず、山側に起こすと、翌年の雪の重みで被害が大きくなる。
縄は、秋までに外すこと。
樹高が、最大積雪深の2.5倍になれば、一般的に不要となる。
最大積雪深が2m以上の場所は、植林は避ける。




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