きこりの森林・林業の教科書

⑪森からの恵み

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マツタケ情報

 マツタケ菌は、真菌植物の中で、生きたアカマツなどの1mm未満の細根と結びつき、宿主が光合成で得た糖類を細胞を通じて直接吸収、採取する。一方、菌根菌であるマツタケ菌は、無機養分であるミネラルや水分を根に供給している。この菌根菌のあるところが白いため、「シロ」と呼ばれ、菌環が形成され、纏まって発生する。このシロの発達を促し、維持することがマツタケの継続的な収穫に結びつく。
 土の中の温度が19度以下になり、降水量が増える9月頃にマツタケが発生する
 シロは、毎年10~15センチ輪が広がっていく。

 アカマツが痩せた尾根筋で生育できるのは、乾燥しても深根性で、地中深くから水分を吸収していることもあるが、補助的にマツタケ菌からの供給も理由の一つとなっている。

 北海道では、トドマツ林でマツタケが収穫できる。

シロ
 地表を剥ぐと土壌中のマツタケの菌糸層が白く見えるので、「シロ=白」
 マツタケの色が白いので、「シロ=白」
 マツタケが生えてくる所なので、「シロ=城」
 稲代のような場所なので、「シロ=代」
 
適地判断
適地 項目 不適地
古生界砂岩、第三系砂岩、花崗岩、花崗斑岩、石英斑岩等の酸性岩質の風化した地帯 地質 アルカリ性から中性に近い石灰岩地帯、火山灰土地帯、蛇紋岩、玄武岩地帯
乾き気味+小石混じり(砂質)の貧褐色土壌
BA、BBが好まれる
土壌 黒色土壌
山頂、尾根、凸型地形の残積土
山全体の形では、急峻な地形の多い壮年期の山地よりも、なだらかな山頂や尾根をもった老年期の方が適地の範囲が広い
地形 谷筋、段丘、扇形地形、山麓、凹型地形、鞍部(峠)等の運積土
10~20年生 林齢 40年生以上
アカマツ支配型 林型 広葉樹支配型
天然生林、天然更新+人工植栽 林相 人工植栽のみ
立木密度
(樹木)アセビ、シラカバ、ソヨゴ、ナラ、ネズミサシ、ミズメ、ヤマボウシ
(草本)ウラジロ、カンビ、コシダ、シラガゴケ、ハナゴケ
相性 カラマツ、クリ、クロモジ、コシアブラ、ゴヨウマツ、ホオノキ
10cm以下、H層が薄い
アカマツの根がA層内に密にある所
落葉腐植層は、多くても2~3cm程度(所々地肌が見える程度で良い)
有機物層 10cm以上、H層が厚い
アカマツの根がAo層内に浮いている所
アミタケ、オオギタチ、キシメジ、キツネタケ、シロシメジ、ヌメイリグチ、ハツタケが生えている所 キノコ類 テングタケ科、フウセンタケ科、ベニタケ科等のキノコ(ケシロハツ、ショウゲンジ、ニガイグチモドキ、ニンギョウタケ)が多く生えている所
疎で生育不良のところ 下層植生 密で生育良好な所
前代にマツタケがあった林 前代林 前代にマツタケがなかった林

施業法の例

(1)20年生前後の場合
20年生前後のアカマツ若齢林では、マツタケ菌に関係のない大きな広葉樹を除伐して、腐植層を掻き取り除去します。アカマツ立木密度の高い林分では、劣勢木を除伐して3000~4000本程度に整理する。
シロが直径60cmを超えるとマツタケが発生する。

施業前 施業後(マツタケ収穫に最低5年)
・大きな広葉樹の伐採
・アカマツの除伐と間伐
・落ち葉と腐葉層の掻き取り掃除
・ツガ、コメツガの保存
・広葉樹の萌芽整理(毎年)
・日陰樹の調整
・落ち葉と腐葉層の掻き取り(柴かき)
・枯れ木の除去
・ワラビの抜き取り(イノシシ対策)
・カシ類の除去(イノシシ・クマ対策)
・ツガ・コメツガの育成

日が当たることでワラビが生育するが、イノシシの餌になる。イノシシが、ワラビ根を求めて、地面を穿ると、せっかく出来たシロが、壊れる。
マツタケ菌は、ツガ・コメツガの細根にも共生して菌根を作るため、松食い虫の被害が発生しアカマツが枯死しても、マツタケが生き残ることが出来る。
シロは30度を超えると死滅する。
柴かきは、B層(鉱質土層)が完全に露出するまでA層を徹底的にかきとることが重要。

(2)30~40年の場合
施業前 施業後
・長期間放置されていた林分は、厚い腐植層があるため、柴かきを小面積づつ実施する。
・長期間放置されていた林分は、厚い腐植層があるため、柴かきを尾根筋やシロのある部分を中心に行う。
・林齢が35を超えていて、初めて整備する際は、腐植層を全て取り除くのではなく。僅かに残しておく。
・間伐の目安は、木漏れ日が朝から夕方まで一日全体にまわる程度(急激な変化を嫌う)
・北側の間伐の目安は、日が余り当たらないため、きつめに実施。
・二股の木や曲がり木は菌根を持っている可能性が高いため、残す。
・柴かきは目の粗いレーキを使用する。
・アカマツの細根を切ることで、活性化させる。
・柴かきは5年毎

マツの林齢が30~60年にシロは活発化し、馬蹄形状になる。


(2)50年生以上のアカマツ林の場合
施業前 施業後
・大きな広葉樹(クリ、コナラ、ソヨゴ、サクラ)の伐採
・低木(2~4m)のツツジ、ネジキ、リョウブの伐採
・下層植生(ワラビ、ササ、潅木)の除去
・落ち葉と腐葉層の掻き取り掃除(シロの場所を除く)
・ツガ、コメツガの保存
・アカマツの枯損木の除去
・弱っているアカマツの保全(下手に伐採するとシロも消滅)
・広葉樹の中段伐り(1.5~2mの高さで伐採)
・株立ちしている広葉樹の伐採(1~2本幹は残す)
腐植層
・厚く溜まると子実体の虫害が増える。
・他のキノコが生育し、マツタケの育つ環境を奪っていく
・過度にシ口上部の腐植層を掻き取れば、シ口が乾燥や直射日光により衰弱する。



(3)70年生のアカマツ林(老齢林:下り山)
シロの直径が8m以上になると生産量が激減するため、次世代の森林作りを行う。
減衰期に入ると、馬蹄形→環状→点々とシロが小さくなる。
広い面積で皆伐して腐植層を除去し、日当たりをよくし、天然下種更新で稚樹を育てる。
施業前 施業後
・広範囲にわたり老木を伐採
・母樹を残し天然下種更新
・実生の稚樹を育成
・クリ、コナラ、サクラの広葉樹は見つけ次第除去
・5~10年毎に広葉樹の除去
・潅木・広葉樹を除去し、アカマツを出来る限り残す
・定期的に掃除を行い、樹齢20~30年生の林分で新しいシロが出来るようにする。

・柴かきの堆積物を林内で焼却するのは、山火事+ツチクラゲ病を誘発する恐れがある。

・土壌に炭を埋め込み、菌根菌を増やして、マツの樹勢が回復している例がある。
マツタケ山の管理

~10年 10~25年 25~60年 60年以上
目的 アカマツ林を作る シロを作る シロを育てる 次世代への橋渡し
作業 雑木の除伐
アカマツ林の手入れ
搬出路の造成(山腹方向に10m間隔に幅1mのもの。)
マツタケ菌接種
掘りおこし
地かき
落葉かき
中下層木の手入れ
アカマツの手入れ
害菌除去
中下層木の手入れ
アカマツの手入れ
キノコの増収 皆伐
母樹からの天然更新
キノコの腐敗防止
害虫防除
トンネル栽培
かん水
備考 胞子法・菌糸注・感染苗
間伐・除伐
間伐
地かき・掘りおこし シロの消失

有害広葉樹
 葉が大きくて腐植層をつくりやすいクリ、コシアブラ(ゴンゼツ)、コナラ、サクラ、タカノツメ、ホウノキ、リョウブ等で、上層のアカマツの立木密度が疎で開きすぎるとき以外は、全て伐採する。

藤原儀兵衛











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