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生物界でのキノコと位置づけは、真核生物の菌類に属し、菌糸という糸状の構造が多数組み合わさって身体が出来ている。キノコは、菌類が作る大型の繁殖器官のことで、子実体と呼ぶ。 日本には、5000種類のキノコが存在すると言われており、名前があるのが2000種程度、食用が約200種、毒キノコが約200種あると言われている。
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2.キノコ栽培 2-1.日本の栽培の歴史 日本における栽培は、2種類ある。一つは原木栽培で、もう一つがおが屑等を固めた菌床栽培である。一般的に、原木栽培は、直射日光の当たらない風通しの良い森林や小屋で栽培され、菌床栽培は、工場で栽培される。 原木栽培の歴史は、正確な記録はないが、シイタケ栽培において、250~300年くらい前に、鉈や斧で木に傷を付け、傷口に胞子が着くのを待つ方法が開発された。このため、木に傷を付けて回るシイタケ栽培を行う技術集団があった。しかし、シイタケが必ず出るという保障は無く、依頼に失敗すると多額の賠償金を支払うこともあった。 昭和18年(1943年)に、森喜作が、シイタケ菌を培養した駒菌(木片に菌糸が蔓延した物)の製造に成功してから、発生が確実となった。1950年代から様々なメーカーが参入し、シイタケ原木栽培は、一気に増加した。 菌床栽培の歴史は、1928年に森本彦三郎によって開発された。事業としては1931年からで、瓶におが屑を詰めてエノキタケを大量栽培した。木質であるおが屑に栄養分を加えた基材に菌糸を付けて、瓶や袋で栽培する方法である。原木がなくても、栽培可能となっていることが強みで、季節に関係なく工場で生産できる。キノコの種類によっては、菌床栽培が始まっても1960年代までは市場が小さかった。しかし、一般家庭への冷蔵庫の普及と流通が整うことで、大量生産が始まった。なお、おが屑はキノコの種類によって使用可能な樹種が決まっている。 針葉樹のおが屑は、そのまま菌床に使うことが出来ない。針葉樹は構造材で使われるため、腐朽に対して抵抗力がある。針葉樹のリグニンが広葉樹に比べ、分解されにくいのが原因である。このため、おが屑に水を撒く撒水という処理を行う。この散水時間は、半年かかることもある。 2-2.海外の栽培の歴史 海外では、三国志を征した司馬炎の西晋時代(265~317年)に書かれた張華(232~300年)の博物誌によると、「江南諸山郡中、大樹断倒者、経春夏生菌」とあり、大木を倒して、春と夏に菌を発生させるという半人工栽培の記録がある。1131年3月17日に、浙江省慶元県龍岩村生まれの呉三公が、木を斧で叩く「驚蕈」という栽培方法は発見し、シイタケを栽培していたとのこと。1313年に王楨が作成した王楨農書には、鉈目式と同じ、砍花法(カンホオア)による栽培方法が「農書・菌子編」で紹介している。しかし、大量生産には至らなかった。 マッシュルームは、古代ローマ時代から厩肥などに自然発生していたものを食用としていたが、1650年頃にパリ近郊のメロンの温床に、マッシュルームが自然発生しているのが発見され、湿度、気温が一定している洞窟での栽培に拙攻した。このため、マッシュルームは、「パリのキノコ」と呼ばれている。 |
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2-3.原木栽培 天然の木を用い木材腐朽菌のきのこを栽培する方法。伐採して枯らした丸太に直接種菌を植え付ける。 一定の長さに整えた丸太を「榾木」という。 栽培方法
メモ ・原木を扱うため、重労働 ・自然栽培であるため、通年の安定供給が難しい。 ・干しシイタケの大半は原木栽培 ・ヒラタケ、ナメコも原木栽培があるが、生産量が僅かであるため、高値で流通している。 ・東日本大震災に伴う原発事故の影響で、東北、北関東(茨城県)を中心に、シイタケ原木の調達が困難となっており、原木による生シイタケの生産量は、2割を切っている。
2-4.菌床栽培 おが屑と栄養体を瓶や袋に詰めて栽培する。 おが屑の種類は、キノコの種類によって異なる。 エノキタケの菌床栽培は、昭和初期にガラス瓶を用いた栽培方法が開発されたが、昭和40年代から大量生産が始まった。 菌床栽培
課題 国産キノコと称していても、木質以外のコーンコブ(トウモロコシの実を取ったあとの軸)やコットンハル(綿実を機械的に破砕し、核を取り出した後の殻と短繊維の混合物)等が外国から輸入して栽培している場合もある。 |
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3.シイタケ 椎茸は、日本食の中で多用されているキノコである。特に干し椎茸は、お祝いなどの贈答品にも利用されており、高級品もある。品種改良されたシイタケ(円形で直径8cm以上、厚み3cm以上、80g以上)は、1個4千円で取引されている。 様々な料理の具材として利用するほか、干し椎茸は、うまみ成分を持っているため、日本料理を作る上でも出汁のような役割を果たしており、日本では、人気の高い食材となっている。このため、生産量にバラツキはあるが、全国で生産されている。 シイタケ栽培自体は、自宅でも可能で、菌が打ち込まれた原木を風呂場など湿気のある場所で育てることが出来るため、栽培キッドも販売されている。 |
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3-1.干しシイタケと生シイタケの違い
このビタミンDは、食事中のカルシウムの吸収と骨を作る作用を促進する。最近の研究では、癌細胞の増殖を抑制する働きが分かっている。
3-2.価格の推移 3-3.原木価格の推移 3-4.生産者数の推移 |
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4.キノコの課題 原木栽培は、原木を運搬するため、重労働であり、高齢化が進むキノコ生産者は、年々減少している。また、気候に左右されやすく、生産が安定しないこともあり、後継者が育ちにくい。 また、2011年の東日本大震災における原発事故の影響で、原木供給基地あった東北・北関東地域の森林が被爆してしまい、原料不足になっている。その結果、最盛期の2割以下しか原木供給が出来ていない。 1990年頃から空調管理が可能な施設で、菌床栽培による大量生産が始まった結果、価格競争で原木栽培は菌床栽培にシェアを奪われ続けている。なお、菌床栽培は大規模投資が可能で、工場にすることで生産コストを削減しており、より安いキノコを市場に提供している。 さらに、大規模工場での栽培も増加しており、従来の山間地域の経済振興とは逆の動きも生まれている。 こういった流れは地域木材の活用の面にも影響を及ぼしている。従来は、製材時に発生するおが屑が、キノコ栽培でも利用されてきた。このため、当初の菌床栽培は100%国産材利用であった。しかし、国産キノコと称していても、木質以外のコーンコブ(トウモロコシの実を取ったあとの軸)やコットンハル(綿実を機械的に破砕し、核を取り出した後の殻と短繊維の混合物)等がおが屑の代替品として、利用されるようになり、木材の活用がなされなくなってきている。 また、原木の価格を抑えるため、地元の伐採・運搬コストがかかる原木より、外部の安い原木を購入し、地元経済に貢献しない事例も発生している。この外部からの原木の持ち込みは、地元にいなかった害虫を運び込み、キノコ生産に支障を来している事例もある。現地に無かった病原菌が侵入することで、栽培の場所だけで無く、周囲の生態系に悪影響を与える可能性も高くなっている。 上昇していた干しシイタケの価格が、1995年に急落しているのは、日本経済の縮小もあるが、供給過剰による値崩れが大きい。価格上昇に伴い、大規模化へ設備投資した後の値崩れによって、借金を抱えた生産農家も発生した。この様に投資判断が難しいところがある。 |
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5.行政の支援 地方政府が所有している研究機関を通じて、病虫害対策、品種改良、栽培方法の改善等の技術的な支援を行っている。具体的には、相談窓口の設置、マニュアルの配布、研修、研究成果発表会等である。また、普及員を通じた経営に関する支援も行っている。経営に関する支援には、経営指標が盛り込まれており、作れば売れるという農民に対し、経営分析をするため投入コスト、ランニングコスト、人件費、季節で変動する価格等を記帳し、経営分析を農家自身で出来るように支援を行っている。但し、全ての地方政府が行っているわけではない。最近の動きとしては、上述のHACCPについての研修を行っている地方政府もある。 また、資金援助も行っている地方政府もある。新規参入者には、施設の費用の一部を補助するだけでなく、研修を行う事例もある。地元の木材を原木として使用する場合、原木代の一部を補助する地方政府もある。 |
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6.地域振興の取り組み 日本の一部の地域では、行政や組合等、主導する組織は異なるが、種付けから収穫までの一連の作業を、全て農家もしくは工場で行うのではなく、衛生管理の厳しい菌糸培養のみを工場で行って、その後は農家で栽培させる方法を採用している。これは、工場で一貫して生産するのではなく、作業工程を分散して、より多くの農家に収入を与えるためであり、一村一品運動の発祥地である大分県大山町(日田市)での取り組みが有名である。収益を農民と工場とで分配することで、工場で一貫生産するより収益は落ちるが、地域振興のために取り入れている。 |
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7.海外のキノコ事情 中国が世界の3/4近くを生産している。中国では輸出も多いが、健康に良いと言うことで国内でも大量に消費されている。
世界のキノコ生産量(FAOSTAT2018年)
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