きこりの森林・林業の教科書



⑫森林を守ろう

概要 病虫害と対策 獣害 気象害 森林火災 竹林対策
主要な病虫害と対策
ナラ枯れ
マツクイムシ
ウサギ
ネズミ
鹿


マニュアル類
冠雪害 火災予防
消火活動
森林保険制度
タケの特徴
タケノコ栽培
竹林の整備
竹の活用
マニュアル類



ナラ枯れ
 カシノナガラキクイムシ(通称「カシナガ」)の集団的に穿入(せんにゅう)することで、ミズナラやコナラ、カシ類を中心に、集団枯損被害を発生する現象。カシナガが直接枯損させるのでは無く、ラファエレア・クエルキボーラ菌(Raffaelea quercivora:通称「ナラ菌」)が、樹幹の坑道を伝って繁殖し四方八方に広がることで、辺材を変色させます。樹木の防衛反応が、二次物質を出してナラ菌を駆除しようとするのですが、菌の繁殖速度に勝てず、変色した辺材の道管は通水機能を失ってしまう。このため、木部樹液の流動が停止します。
感染した木は、梅雨明けに待っている光合成をするための水が不足することで、枯れてしまう。
ブナ科樹木萎凋病とも言われるが、ブナ属は枯れない。ブナ属以外が被害を受けている。

 カシナガは、カシ類の木を食べるために穿入するのではなく、孔道内に菌類を繁殖させて食料にするためで、カシナガが属するキクイムシは、木を直接食べる、セルロースやリグニンを分解する消化酵素を持っていません。熱帯のハキリアリと同じです。あっちは、葉をちぎっては、堆積させ、その中でキノコを育てるからです。



カシノナガラキクイムシ


被害のサイクル

6~8月 健全なナラ類の木に飛来し穿入する。
6~9月 潜入した個体の集合フェルモンにより、集団で集中的に潜入する。
これをマスアタックと呼ぶ。
8~9月 穿入した際に伝搬したナラ菌が繁殖し、樹幹の水分通道機能が悪化し、急激に枯死する
10~6月 枯らした穿入木で繁殖し、越冬する。
翌年、成虫になった個体は、周囲の健全なナラ類の樹種に飛来して、穿入する。

被害発生木

樹種
コナラ属 コナラ、ミズナラ、アベマキ、カシワ、シラカシ
(アカガシ、クヌギは、潜入されても枯死しない?)
クリ属 クリ
シイ属 スダジイ

被害木の見分け方

・梅雨明けの7月下旬頃から、紅葉したように突然葉が赤くなる。
・被害木の根元付近に、穿入によって発生した大量の木屑(フラス)が見られる。
・樹幹の鯛警部に、1.5~2.0ミリほどの穿入痕が沢山見られる。
・老齢木、大径木が被害を受けやすい。

対策

対策方法 種類 実施内容 特徴
伐倒駆除 駆除 被害木を伐採し、根株を含むカシナガの穿入している範囲を焼却・燻蒸 最も効果的
伐採作業に高度な技術と労力が必要
急傾斜では集積が困難
立木燻蒸処理 駆除 被害木の地際から1.5m程度の範囲に穴を開け、燻蒸剤を注入 伐採しない。
施工が容易
立木噴霧剤処理
(粘着剤)
駆除
予防
被害木でカシナガの穿入している範囲や、周囲にある健全木に、粘着剤を塗布して、被害木にはカシナガの脱出を阻止し、健全木には、穿入を抑止する。
効果は、1年ほど
施工は容易
資材運搬に労力を要する
駆除と予防の効果がある
毎年行う必要がある
樹幹注入剤 予防 健全木に薬剤を注入して、ナラ菌の繁殖を抑止する。
効果は2年ほど
予防効果が高い
施工技術を要する。
DBH30cm以上
景勝地
粘着シート 駆除
予防
カシナガを粘着シートで捕獲する防除方法
被害木には、脱出するカシナガを捕獲する。
健全木には、潜入するカシナガを捕獲する。
施工が簡単。
軽量のため、資材運搬が容易なため、広範囲で防除が可能
駆除と予防の療法の効果がある
急傾斜地など作業が困難な場所

場所 被害名 特徴 対処法







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