きこりの森林・林業の教科書
⑭森林評価・森林調査

森林評価・森林調査 測量・計測 資源量調査 動物調査 利用動態調査
測量とは
航空レーザ計測
立木評価
収穫予想表
哺乳類調査
鳥類調査
昆虫調査
試験計画と取りまとめ
【立木評価に必要な調査】

①毎木調査法
・調査対象林分の全ての立木について樹種、樹高、胸高直径等について計測する方法。

②標準地調査法
・調査対象林分のうち、標準になる場所を設定し、設定した地点での毎木調査で得られた情報を基に、単位面積当たりの材積を計算し、全森林の面積で材積を求める方法。
 普通は、全森林の5~10%程度で、1箇所当たり0.1ha以上が望ましい。

③標本調査法
・近代的統計理論に基づく調査方法で、対象林分をランダムに設定し、設定した地点での毎木調査で得られた情報を基に、全森林の材積を求める。広域の森林調査に適した方法。

【立木の評価】
立木の評価方法には、下記のような評価方法がある。
評価方法 内容
伐期未満の人工林立木評価 林木費用価法
(造林費用価法)
人工林で10年生以下の幼齢林で、市場価格のない立木において、これまでにどれほどの立木育成費用が投じられたのかに着目して求める手法。
グラーゼルの近似式法 実験により統計的手法に基づき数学的補正を行った式であり、計算が簡便であることから採用される手法である。一般に幼齢林から壮齢林までの中間齢級の立木に適用される場合が多い。
伐期未満の天然林立木評価 マルチナイト式法 造林費の投入を伴わない伐期未満の天然性林の場合において、グラーゼル式の造林費を考慮しないで求める手法。
伐期以上の立木評価 期望価法 人工林で11年生以上の立木で、市場価格のない立木において、これを利用することによってどれほどの収益が得られるか収益性に着目した理論的な手法。一般的には伐期に近い壮齢林に適用するのが有効である。
市場価逆算法 市場価格のある立木で市場においてどれほどの値段で取り引きされているか、取引事例 に着目して求めるもの。最寄り市場で取り引きされる市場価格から伐採・搬出に要する事業費等を控除して立木価格を求める手法。市場価格のある立木にはこの手法が用いられるのが一般的
市場価法
(市場価逆算式)
実際に取引されている丸太価格、賃金、歩掛かり(作業量;功程)を用いて現実的な価格を算出する。
費用価法 造林から今までの費用を現在の価格に換算し、現在価格を推定する。林齢11年生未満と以上で計算式が異なる。
期望価法 その林分から得られた過去の収入、伐期までに得られる収入推定値から現在を評価する。
還元法 伐期の主収入推定値及び伐期までの間伐等の副収入推定値から現在を評価する。

一般的に使われている市場価法は、以下の通りである。




または







①利用率の算出
 立木材積をS。立木から伐木造材された丸太材積をLとし、f=L/S*100で利用率が出る。

②立木材積、丸太材積の求め方
 立木材積Sは、DBHと樹高が分かれば、立木幹材積表によって、もしくは、JASに定められた丸太材積Lから求められる。

6m以下の丸太の場合
丸太材積=末口径×末口径×長さ

6mを超える場合
丸太材積=(末口径×利用率×(長さ-1m未満の端数)2乗×長さ

※丸太の末口径は14cmまでは1cmで、14cm以上は2cmで表示する。

③標準木の採材
 立木から、どのような丸太が斎座漁れるかを測定する必要があり、一般的には、標準木を選定し、採材を予測する方法が用いられる。
 DBHと樹高が分かれば、細り表を活用することで、採材予測が容易となる。 
 間伐で実際に伐倒する場合は、現実に採材出来るので、それを標準的な値として用いる。

④市場価格の把握(A)
 森林所在地の最寄りの木材市場価格を用いる。
 銘木や床柱など特殊な材を採材出来るような林分があれば、最寄りの市場に拘らず、有利な販売先を見いだしておくと良い。

⑤資本回収期間の決定(l)
 事業を開始するに当たり、市中銀行などから資本の借入をして契約金(手付金)、賃金、燃料費などのコストと、数駅は剤が売れて代金が入るまで回収とはならない。
林分の調査
 評価の前に、林分内に成立している樹種、本数、DBH(平均と範囲)、樹高(平均と範囲)、立木材積を調査します。

1.調査方法
 一般的に、全木を調査する毎木法と、その林分の標準的な場所を選んで調査する標準地法がある。一般的に、立木が非常に高値で取引されるような特殊な事情を除いては、標準地法が用いられる。
 標準地の起き差は、対象林分面積の10~20%が適当。ただし、天然性広葉樹林の場合は、樹種の違い、径級の違いで取引価格が変わるため、標準地面積を大きく取る。

2.調査野帳
 調査野帳には、以下の様な情報を記載する。


①整理用
樹種 ▲▲ 林齢 ●●年生 所有者 
標準地 面積 本数 DBH 樹高 材積 メモ
ha当り
対象林分

②現場用:樹種が複数の場合 標準地面積●●ha
樹種 DBH 樹高 材積 形質(品位) メモ
主な樹種を集計し、①で樹種毎に集計する。

③現場用:樹種が単一の場合 樹種▲▲ 標準地面積●●ha 
DBH 野帳(玉取り) 本数 樹高 単材積 材積 メモ
調査結果を集計し、①にまとめる。


3.林分調査の留意事項
面積は正確か、傾斜、林床状況はどうか 作業期間や導入機械等の決定、作業量の目安を付ける。
林分内に無立木地はあるか ある場合、その比率を把握する。
市場からの距離、労働者の輸送、通勤は便利か 運材方法や労働宿舎の必要性を検討する。
林道や作業道、土場(丸太集積場)の開設・修理の必要性は、 施設とその費用を検討する。
権利関係はどうか 通行や土場で他人の土地を使用するかしないか、土地と立木の権利者は同じか、担保は取られていないか

4.権利者相互の立ち会い
 評価と取引が一連である場合は、必ず両者が立ち会いして調査する。
 両者納得の上で商取引が成立するためであるので。




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