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収穫予想表(empirical yield table) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.考え方 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
林野庁は、人工林収穫予測調査事業の一環として、「南近畿、四国地方」の林分密度管理図を昭和54年度はスギについて、昭和55年度はヒノキについて調製した。 林分密度管理図を構成する等平均樹高曲線・等平均直径曲線による林分材積および平均直径の推定精度は、実用的に満足できると考えられる。そこでこれらを作製するために求めた収量密度効果の逆数式、林分形状高推定式、平均直径と、断面積平均直径の関係式を利用し、森林施業の違いによる収穫量の比較や現時点における林分の構造を推定する事が可能になる。 本書は林分密度管理図に要した調査データに加え、新たに追加データを調査し、県下民有林の人工林における、ある施業体系による収穫の予測や林分蓄積の算定を行う事を目的としてとりまとめたものである。 |
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2.標準値設定の条件 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
①標準値設定の条件 ・同齢単純林で被害その他の故障がなく、健全な生育をしており、一林分がおおむね0.5ha 以上であること。 ・林冠に異常な空隙のないこと。 ・間伐が行われた林分は間伐後5年以上経過していること。 ②標準地の面積 ・概ね0.1ha。(林縁はのぞく) ・4齢級(20年生)以下でha 当りの本数が多い時は0.05でも可。 ③調査事項と方法 ・面積……コンパス測量による。 ・林齢……伐根や聞きとり。 ・毎木調査 ・一例として、半径 15m を標準とした円形プロットの標準地調査とし、林分毎に1標準地を設定する。 ・別の例として、50×20m、40×25mのプロット ・高齢級林分の場合は、20×25m(成立状態は不均一な場合が多いため、平均的なデータ把握できる箇所を選定) ・林齢は、伐根から判読 -毎木調査- (1)樹高……ブルーメライス測高器によって、各直径階毎に3本づつ測定し、まずそれらの平均値を出す。 次に三点平均によって径階毎の値を算出し、それを図上にプロットする。 その図上にフリーハンドで曲線を描き、各直径の樹高を読みとる。 (2)胸高直径……2cm括約で標準地内の全本数を調査した。 (3)上、下層木……(1)、(2)について上層林冠を形成するものと下層木とに分けて調査した。 (4)材積……立木材積は林野庁計画課編「立木幹材積表」を用いて計算する。 ④調査した林分のデータ 標準地調査の結果により、ha当りの本数・胸高・断面積・材積を計算し林分密度管理の理論式にあてはめ、実測値と推定値との差が大なるものを棄却する。 V=FGH 材積(V)=胸高断面積(G)×上層樹高(H)×林分係数(F) この時、Fが03以下、0.6以上は異常値のため廃却する。 (1)林分形状高と上層樹高、林分密度の関係 (2)平均直径と断面積平均直径、林分密度との関係 (3)平均樹高と上層樹高、林分密度との関係 (4)平均単木材積と上層樹高、㏊当りの本数との関係 これらも異常値があると、廃却する。 最終的に利用したデータを「表-1」に示す。 |
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表-1 調査林分のデータ一覧(樹種)
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※林齢(10年から5年ごとに80年まで、及びその間の収量比数で制御した間伐時の林齢) ※本数 ha当りの本数 ※胸高直径(DBH) 林木の平均胸高直径 ※胸高断面積 ha当りの胸高断面積 ※材積 ha当りの立木材積 ※ha当りの等平均樹高曲線上で得られる最多の幹材積と同一線上のある密度における幹材積との比(=Ry)。 |
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3 人工林収穫予想表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
①収穫予想表とは 対象となる樹種について、標準的な施業体系により施業された同齢単純林が健全な生育をした場合に生産すると予想されるha当りの主林木(間伐時の残存木)・副林木(間伐時の伐採木)の本数・幹材積・その他必要な諸因子の標準的数値を人工林密度管理図を基に地位と林齢を対応させて計算し、表示したものである。 ②標準的な施業体系 県下における色々な施業体系を参考に「表-3」のとおり定める。 |
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表3 施業体系(案)
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※収量比数(Ry)は、林分密度の指標となるもので、林齢毎の上層樹高の最多密度における㏊当りの幹材積と同じ上層樹高線上にある現実推定本数の時の㏊当りの幹材積との比で表される。
※相対幹距比(RI) 林分密度の指標となるもので、上層樹高と平均樹幹距離との比で表す。 RI=100/H√N |
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③収穫表の調製 (1)平均的な成長傾向の推定 林分密度管理図は、ha 当りの本数と上層樹高(上層林冠を占める林木の樹高の平均値)とで、ha 当りの材積や平均直径を推定するのに有用であるが、森林施業の重要な因子である林齢や地位と対応させるため、密度の影響が少ないと考えられている上層樹高の地位級別成長曲線を作成し、地位級・林齢別に林分構造の推移を求めることとした。 (2)樹高成長曲線 まず「表-4」に示す6種の実験式についてデータをあてはめ、推定精度と従来の経験によって平均的な成長傾向を示すものを採用した。その結果を「表-5」に示す。 |
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表4 検討した樹高曲線式
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表5 採用した曲線式
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(3)理論成長曲線 (2)で求めた樹高成長曲線の式は、最小二乗法により係数を算定した実験式なので、各係数の論理的な解釈が難しく、またロジスティック曲線などで示される理論的成長過程とくいちがう事も考えられる。 そこで採用された曲線式による推定値に「表-6」に示す4種の理論曲線式をあてはめ、最も適合するもので各林齢における樹高成長の平均的傾向を求める事とした。その結果を「表-7」に示す。 |
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表6 理論曲線式
表7 採用した曲線式
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(4)地位別樹高曲線のあてはめ 地位別樹高曲線のあてはめは、基準曲線上の値にある定数を乗ずることによって求められる変態図法によった。 すなわち、(3)で求めた基準曲線の上下に定めた範囲内にデータの95%が含まれるよう、乗ずる定数を求める。このようにして求めた定数を乗じて上限と下限を求め、この範囲を地位級の数(=5)に等分し、各区の中心を地位別曲線とする。「表8」にその結果を示す。 |
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表8 地位別の樹高曲線の係数
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④使用上の注意 (1)適用範囲 ××県下民有林のスギ・ヒノキ同齢単純林 (2)使用目的 (1)の林分の施業と収穫の予測の指針とする。 |
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4 林分材積表 1 林分材積表とは 同齢単純林における地位と林齢に対応する平均的なha 当りの本数と上 層樹高から、林分密度管理図を基に、地位別・林齢別のha 当りの幹材積・ 胸高直径・胸高断面積を示したものである。 2 林分材積表の調製 アha 当りの本数の推定 ha 当りの本数(N)と上層樹高(H)との間には次式が成り立つ。 logN=b0+b1H この式から求めた本数を林分密度管理図に用いれば直ちにha 当りの 材積を得られる。 この式を片対数方眼紙にプロットすると、本来は直線になるべきもの が2~3本の折線で示した方が良いように見える。そこで各直線のつな ぎめでの差が10本以内になるよう試行錯誤で求めた係数が「表-9」で ある。 |
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上層樹高階別、ha 当り本数の推定式の係数
「表-8」で得た地位別の上層樹高を「表-9」で得た式に代入し、 林齢別・地位級別・上層樹高階別の本数を求め、林分密度管理図の諸式 から材積・胸高直径等を算定した。 3 使用上の注意 ア適用範囲 愛媛県下民有林のスギ・ヒノキ同齢単純林 イ使用目的 現実林分の現段階における地位別の平均的なha 当りの本数に対する 林分構成因子を知る。 ウ語句の説明(3-4-ウ以外) ア現存量 現実林分の現段階における林分構成因子の林齢ごとの平均的数値。 (林齢は10年から5年毎に80年まで) イ自然枯死との差 齢階ごとのha 当りの本数の減少は、自然枯死線から推定される量 よりかなり大きくなっている。 この差は除間伐などによって入為的に林分から除去された量と考え られる。すなわちt年における本数Ntが自然枯死によって(t+5) 年にN(t+5)になった時のha 当たりの材積・断面積・平均直径 の値と(t+5)年における現存量で示される値との差が自然枯死と の差として示される。 この値全部が間伐量とは言えないが、色々な密度管理方式を採用した結果として平均的に林分から取り除かれる量と言える。 4 使用例 スギで地位級3の場合(60ページ)、40年生の時、上層樹高18.7m、立木 本数1、159本、平均直径23.0、材積が460.4ある事がわかる。 自然枯死との差が110本あり、現存量1、159本と足すと1、269本になる。 35年生の時の現存量1、289本との差20本が自然枯死本数と言える。(「図- 1」参照) 自然枯死との差 |
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5 おわりに 収穫予想表、林分材積表は共に過去の施業の結果としての現在の状態をあ る条件をつけて表したものである。 その数値は様々なデータの性質を表す、いわば代表値であるので現場の一 林分と照合すると若干のズレを伴う場合の方が多い(そのズレを最少にする べく統計処理を施してあるが)ので、使用上はその事に留意して活用して欲 しい。出来れば新しいデータを集積し、その地方におけるズレの傾向等をつ かめれば、活用の度合も高まってくるであろう。 |
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