きこりの森林・林業の教科書
⑭森林調査

森林調査 測量・計測 資源量調査 動物調査 利用動態調査
測量とは
航空レーザ計測
哺乳類調査
鳥類調査
昆虫調査
試験計画と取りまとめ
航空レーザ計測とは
はじめに
航空レーザスキャナ、レーザ・プロファイラシステムとも呼ばれている。
この近赤外波長を使用する航空レーザ測量は、1995年頃に日本に導入されて以来、ハードウェア(特に、レーザ発射頻度)の能力向上及び衛星測位システムの品質向上とともに、データ処理・解析技術も発展している。

航空機から地上に向けてレーザパルス(レーザ光)を照射して、地上から反射してくるレーザとの時間差より、航空地と地上のレーザパルスが反射した地点の距離を計算する技術です。このレーザパルスは、1秒間に数万回照射されます。

従来の手法との違い
 従来の地形図作成は、航空写真を用いた空中写真測量が主体でした。数値標高データをオペレーターは1点ずつ取得し、山間部では樹木の高さを勘案して座標を取得するため、判読する人によって数値にブレが発生していた。個人差の出るデータ処理方法であった。
 この航空レーザ測量では、1秒間に数万点という大量の標高値を取得することが出来、樹木などの地物に対しては、「フィルタリング」と呼ばれる機械的な処理によって除去される。
 従来の方法とは異なり、担当者の主観が介入せず、客観的なデータ処理が行えるのが大きな違いである。

 等高線図は、メッシュデータから作成される。メッシュデータには樹木などが機械的除去されるため、技術者(判読者)の主観が入らず、客観的な等高線となる。
 このため、扇状地などは従来の地形図であれば、半円錐形状に表現されるが、より明確に表現可能となる。
項目 航空レーザ測量による等高線図 航測図化による地形図
等高線の取得 フィルタリングで植生・地物を取り除いたデータ(メッシュデータ)から等高線を作成するため客観的な等高線が描画される。 技術者が樹木の高さを勘案して書くため、個人差が生じる。
等高線は主観的に描画される。
等高線の形状 等高線が鋭敏で鮮明 等高線が滑らか
地形の再現性 微地形が明瞭に表現 微地形は余り明瞭では無い
道路・切土・盛土等の構造物 等高線で表現されるため、正確な位置・形状がわかりにくい 道路縁及び構造物が記号等で表現される。

航空機に搭載したレーザ測距装置を使って、地表を水平方向に座標、高さの3次元で計測する方法で、①計画準備、②計測(データ収集)、③処理・解析・加工の3つに分けることが出来る。

①計画準備
 業務の目的及び趣旨を十分理解する。適切な工程計画、使用機器、技術者の配置を計測する地形や森林の状況を考慮して立案する。
 飛行する操縦士、整備士、撮影しに業務の内容を十分に把握させる。
 関係機関への諸手続を行う。

②計測(データ収集)
 地表にある山や谷などの自然地形、宅地や道路などの人工地形、森林などの自然地理物、橋やビル、住宅などの人工地理物からなる地物を、航空機からレーザを発射して距離を測定し、その数値を測量座標系に示す。
 計測を行う航空レーザ計測システムは、全地球測位システム(GNSS)、慣性計測装置(IMU)、レーザ測距儀の3つの機器と、デジカメなどの画像取得装置から構成されている。

③処理・解析・加工
 はじめに、取得したデータからキネマテック解析・GNSS/IMU解析・座標変換・標高変換の1次処理をして、オリジナルデータとして3次元計測データが出来る。
 次に精度検証を経て、レーザデータ処理として、地物分離のフィルタリング処理が行われ、オリジナルデータから、グラウンドデータを作成する。
 これまでの作業で作成したランダムデータ(オリジナルデータとグラウンドデータ)を内挿によってメッシュデータに変換します。メッシュデータからボリューム算出やCGに利用しやすいデータに加工する。

成果品の活用
基本は、地形図(平面図)、定期横断図、オルソフォト画像
応用は、任意横断図、微地形三次元地図、標高分布図、土砂変動差分図、鳥瞰図、ビューワ
森林・林業分野の特徴
<地形解析の特徴> 
・広域の荒廃状況を正確に把握できる。
・樹木下の微細な地形を把握できる。
・地形や土砂の変動量を把握できる。
・既施工地(山腹工、、景観子、路網等)の位置、規模が正確に把握できる。
・任意の場所での縦横断図が作成でき、計画の概略が作成できる。
・鳥瞰図の作成等各種説明用に活用できる。

<樹木解析の特徴>
・地形などによる影の影響を受けない。
・倒れ込みが無く、不可視領域が無い。
・空中写真で生じる接合部の色調の違いが生じない。

森林レーザ解析で得られる情報(4点/m2の場合)
・樹高(小班単位、単木単位)
・立木密度
・胸高直径(樹幹面積からの推定)
・材積(小班単位、単木単位)、収量比数
・樹冠長(率)、
・荒廃地林の分布把握
・林分垂直構造の把握

<その他>
・現地調査で得ることが難しい多様な情報が取得できる。
・詳細地形を事前に入することで、現地作業の効率化が図れる。
・入山が困難な箇所の情報が取得できる
・短期間で、広域の森林情報、地形情報を一定の精度で面的に把握可能
・解析データだけで無く、現地調査データ、地理・地形データ等がGISで一元管理することが可能
・3次元データであるため、鳥瞰図作成等説明資料に使える。


レーザ照査点数の比較

1点/m2 樹頂付近にレーダが当たりにくく、単木での解析が不可能
下層植生や地盤に到達するレーダが少なく解析の精度が低くなる。
4点/m2 樹頂付近にもレーダが当たる可能性が高く、単木の解析が可能
下層植生や地盤にも数多くのレーダが当たるため、より詳細な解析が可能




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